いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第5章 私が選ぶ場所
『…でも、何も言わずにいなくなったら普通心配するから!!…それに…』
何かを言おうとして口籠った沙羅、
なんとなく理解した太宰は
「それに?」
と、悪戯に問い返してみる
『………治がいなくなったらなんだか寂しいじゃん…』
普段素直に気持ちを伝える事も少ないため
沙羅は少し恥ずかしそうに
自分のコートの裾を両手で
ギュッと掴んで俯いた。
「ふふ、随分と嬉しい事を言ってくれるね」
それを聞いた太宰は、
小さく笑みを浮かべた。
『…喜んでないで少しは反省してっ!』
「……うん、ごめん。」
太宰は沙羅の頭に手を乗せて
髪の流れに沿って軽く頭を撫でる
その光景は側から見れば
とてもロマンチックなものだった。
この2人はもう、
ポートマフィアの人間ではない、
あの時とは違って2人の瞳には
海に反射した街の光が綺麗に映っている
「……。」
________でも、本当に此処へ来てよかったのかい?
太宰はそう問おうとしたけど
沙羅の顔を見たら、
その問いは必要ないなと悟った
沙羅の表情に、
迷いなんてなかった
お互いに、友の言葉を信じる為に
「…経歴を消す為に、これから2年近くは地下に潜る必要がある。それが終わったら、ある場所へ向かう。…沙羅、私と共に来てくれるかい?」
太宰は沙羅の前に、片手を差し出した
『勿論、治と一緒に行くよ。そのつもりで此処に来たんだから。』
沙羅は迷う事なくその手を取ると
ニコッと優しく微笑んだ
_____________これが、第一歩。