いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第3章 私がもっと、強かったら。
−中也side−
“失うって怖いね”
そう言った沙羅の声は震えていた
大切な人を一気に2人も
失ったら無理もないだろう
事情は一応訊いている
友人の織田作之助という男が
ついこの前の事件にて死んだという事
そしてもう一つは、
太宰治が行方を眩ませている事。
「俺は、此処にいる。消えたりしない」
『………うん』
言葉の少ない会話だったが、
それでもお互い何を思っているのか
なんとなく理解できてしまう
『……来てくれて、ありがとう。なんだか中也には沢山助けてもらってばっかりな気がするね』
抱きしめていた手をそっと離すと
沙羅は元通りの、いつもの笑顔で俺を見た
「…手前はもっと人に頼れ。沙羅が困ってるなら、俺は何度だって手前を助ける。」
『………ふふっ』
「そこ笑うとこか?!」
真剣に言ったつもりだったが、
突然沙羅が小さく笑った
『だって、言ってる事かっこよすぎて中也が一瞬王子様に見えたんだもん。柄に合わなすぎてっ』
「はぁ?折角人が心配してやってるってのに手前はいつもいつも…」
でも、こうして笑う沙羅の姿を見ると
______あぁ、いつもの沙羅だ。
って、そう思える
それは何よりも大切な事だった
『……中也が王子様なら、もしも私が消えてしまった時はちゃんと攫いに来てね。』