いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第3章 私がもっと、強かったら。
−沙羅side−
『……!』
私は突然、中也に抱きしめられた
ギュッと、力強く
『痛いよ、中也』
思わず涙が溢れそうになったのを
誤魔化す為に、
いつものように笑顔を作ろうとした
けど、今の私に
綺麗な笑顔は作れそうになかった
「俺の前で無理すんじゃねぇ。泣きたけりゃ泣けばいい。…俺が側にいる」
抱きしめられたまま頭を撫でられて
堪えていた涙が、一気に溢れ出す
『…中也にはホント…敵わないなぁ……』
中也の洋服の袖を、ギュッと掴んだ
体重を預けて、下を向けば
もう涙が止まらない
私の頭を撫でる中也の手は優しくて
少し、心が軽くなった気がした。
人前で泣くなんて、いつぶりだろう
私は中也の腕の中で声を殺して泣いた。
そして中也は、私が落ち着くまで
何も聞かずにただ私の事を抱きしめてくれた
『…………中也』
「…どうした?」
『…“失う”って、怖いね』