いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第3章 私がもっと、強かったら。
−中也side−
「沙羅……?」
最近姿を見ないと思えば
沙羅はあの日からずっと
自身の執務室に籠りっきりだと聞いた
構成員が云うには、
執務室から出ては来ないが
問いかけへの返答はしてくれていたらしい
そして沙羅は元気そうだった、と
「……どう見ても元気そうじゃねぇだろ」
扉を開けて執務室の中に入れば
大きな窓ガラスから外を眺める
沙羅が、俺の方へ振り返った
そして、沙羅の瞳からは
一筋の涙が溢れていてた。
綺麗だと、思った
『っ!……中也、何か用事?』
俺がここに居る事を理解した沙羅は
涙を隠すように後ろを向くと
明るく俺にそう言った
「無理してんじゃねぇよ」
『無理なんて、してないよ』
嘘だ。
今まで一度だって、
沙羅が泣いている所なんて見たことがない
一度だって、涙を見せなかった
でも、沙羅は今泣いていた。
それだけで沙羅の心が
どれだけ追い詰められていたのか、
理解するの時間はかからなかった。
いや、沙羅が一度も
涙を見せなかったは、
沙羅が人前で泣かないように
していただけなのかもしれない
つまり…
今までもこうして一人で
泣いていたのか……?
そんな考えが頭に浮かんできた俺は
頭で考えるよりも早く体が動いて
沙羅を抱きしめていた