いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第2章 戻れない場所
「…不確定要素は大きいですが、異能力の特異点の問題もあります」
『異能力の、特異点?』
安吾の言った、
“異能力の特異点”という言葉
聞き覚えのない言葉に、
沙羅は安吾に問いかける
「ジイドに対して異能力を使ったとき、いつもと違うことが起きませんでしたか?」
「起きた」
「複数の異能力が干渉し合うと、ごくまれに全く予想もしなかった方向に異能力が暴走するという現象が政府機関によって確認されています。今の話、本当はしてはいけないことになっています。僕がこうして会っていることも。上層部に知られたら大問題になります。当面は姿を隠さなくては」
「おやおや。まるで自分が生きてここから出られるみたいな口ぶりだね」
オレンジ色の照明で照らされる
夜の酒場が、太宰の言葉により
安吾の表情と共に一瞬凍りついた
「ここを戦場にする気か」
『ええ、流石にここ戦場にするのはやだなー…』
織田作と沙羅は
太宰の突飛な発言にはもう慣れた、
とでも言いたげに冷静に言葉を返す
「私の気が変わらないうちに消えるんだ。別に悲しんでいるんじゃない。最初から分かっていたことだ。安吾が特務課であろうとなかろうと、失いたくないものは必ず失われる。求める価値のあるものは皆、手に入れた瞬間に失うことが約束されている。苦しい生を引き延ばしてまで追い求めるものなんて、何も無い」
無表情のまま太宰がそう言うと
3人共視線を下げて、
無言のまま数秒が経った