第3章 忘れさせてあげる⦅七海⦆
「僕は ずっと近くで を見てきたんだ。まだ想いを伝えるタイミングじゃない、もう少し…って思っていたのに…。
それなのに七海は勝手に僕から を取ったんだ」
「 は物ではありません」
怒りを含みながら七海は そう言い返した。
「だから、僕だけの事で頭がいっぱきになるようにしたの」
「………最低ですね…」
七海は そう言って その場を離れた。
七海は歩きながら に電話をするが は電話に出ない。
「ッチ」
七海は無意識のうちに舌打ちをし、 の部屋を目指した。
コンコン、とノックをするが返事が無い。
試しにドアを開けると すんなり 入る事が出来た。
「 ?!」
部屋に上がり、 を探す。
ザー…とシャワーの音がする。
シャワーを浴びている を見つけた 七海は安堵したが の肩は小さく震えていた。
その瞬間、七海は自分のスーツが濡れるのも気にせず、気がついたら を後ろから抱きしめていた。
『?! 健人?』
自分を抱きしめる見馴れたスーツに、 は驚いた。
「……五条さんから話を聞きました」
七海の言葉に、 は一瞬体を強ばらせた。
「私が忘れさせてあげます…」
そう言って を自分と向き合うようにするが、下を向いたまま こちらを見ない の顎をクイッと持ち上げた。
そして七海は静かに顔を近づけたが、 の両手が七海の口を覆った。
『…私、センパイとキス…したんだよ?』