第3章 忘れさせてあげる⦅七海⦆
五条の言っている意味が分からず黙っている に、五条の整った顔が近づいた。
『~っ?!』
突然の口付けに驚いた は、五条から離れようとするが腰にあった手は いつの間にか の後頭部を支え、離れられないようにしていた。
『…ッ……ん…』
ドン!ドン!と五条の胸板を叩くが五条はキスを止める事はなく、 は五条の舌に噛み付いた。
「……っ!! 噛むなんて酷いな」
目に涙を浮かべながら自分を睨む に視線を合わせて 低い声でそう言うと、 は声を震わせて『センパイのバカ』と言って去って行ってしまった。
突然の事で逃げるように自分の部屋に戻ってきた は、玄関の革靴に気付いた。
報告書を届けに行く前に七海から連絡があり、自分の部屋で待っていて欲しいと送り返していた事を思い出したのだ。
⦅ どうしよう… ⦆
その場に立ち尽くしていると、七海が「 ?」と玄関に向かってやって来た。
『…健人…』
愛おしい恋人を見つめ、 はとっさに口を覆い、涙が零れた。
「 ? どうしたんですか?!」
ぽろぽろと涙を流す に近づこうとすると、 は『ダメ!』と大きな声を出した。
『…健人。
私から呼んでいたのに ごめんなさい…、今は1人になりたい…』
「ですが …」
心配そうに を見る七海に、 は小さく『ごめんなさい…』と繰り返した。