君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第209章 209
嬉しそうに龍之介の首に腕を回し、その口付けに応えるの姿に、龍之介の唇は自然と笑みを浮かべた。
「可愛い…」
「龍くんはカッコいい。今日は可愛いけど」
「可愛い?」
「うん、お酒に酔った時みたい。ふにゃふにゃしてて、甘えん坊で…可愛いっ」
くすくすと笑うに笑みを返し、起きれそう、とそのままベッドから身を起こす。
「汗かいちゃってるから、一回着替えよっか」
熱で体温が上がり汗をかきやすいのだろう。
背中がしっとりしている龍之介を見て、はクローゼットへと向かう。
Tシャツとハーフパンツを取り出しベッドへ戻れば、の言葉に頷いて寝巻を脱いだ龍之介の背中。
「…くらくらする」
「え?!風邪移った!?」
「ううん、その広い背中が色っぽ過ぎてくらくらする」
「っ…」
背中に触れられ、唇が手のひらを追いかけるように背中を這う。
ひくりと身体を震わせ、背後のを見ようと首を傾ける。
ここで流されてはいけない。
いけないのだが、如何せん龍之介はが好きすぎる。
だが、ぴたりとの動きが止まった。
「龍くん」
「ん…?」
「明日、仕事行くの怖いな…」
背中でぽつりと呟かれた一言。
その言葉に龍之介は身体ごとそっと振り向き、を抱きしめた。
事件解決直後から、龍之介はの傍を片時も離れず、またも龍之介の傍から離れようとしない。
平気なふりが出来ているのは、龍之介という大きな支えが傍に居てくれるから。
けれど、明日からはそうもいかない。
は仕事があるし、龍之介も少なからず仕事がある。
「そうだよね。怖いよね」
「うん…」
「を送って行けるように、俺もこの風邪早く治さないとね」
「うん…ん?え?万理さん来るから大丈夫だよ?」
「うん、でも…心配なんだ。本当は、仕事行かずに俺の傍で守られててほしい」
「龍くん…」
じっと見上げてくるの頬を撫で、龍之介は小さく苦笑する。
のこの顔は、龍之介の言葉に全く困っていない。
ダメだ。これ以上を束縛する様なことを言ったら、彼女はころりとこの腕の中に埋まって、二度と羽ばたけなくなってしまう。