君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第208章 208
「さんへの執着心がかなり強い、ストーカー気質な部分があります。しばらくは拘留され、裁判で懲役を科すことも可能かと思いますが…。それでも十分に気を付けてください」
「はい…」
「…おい、もう報道出てるぞ」
スマホを見ていた楽が、ニュース映像を映し皆に見せる。
『昨夜遅く、俳優の鳳響也さんが逮捕されました。鳳さんは違法薬物を所持していたとし、また他の事件にも関係していたことが明らかになっています』
「…この他の事件って…」
「私の事…?」
不安げに呟くの肩を抱き、龍之介はスマホを楽に返す。
「さんの名前は出ないよう細心の注意を払っています。ですが、院内や救急車に乗る様子がどこかで撮られていてもおかしくはありません」
「…わかりました。その場合は事務所と相談して対処します。兎に角、素早い犯人逮捕、ありがとうございました」
取り急ぎの報告だったようで、刑事は一礼し病室を出ていく。
「うーん、早く退院したかったけど…」
「せめて一般診療が終わるまでは動かない方が良いかもしれないね。俺、ちょっとナースステーションで相談して来るよ」
「お前が病室から出ても大騒ぎだろうが」
「まだ面会時間始まってないから多少は大丈夫じゃない?僕達もそれ狙って来たんだし」
まだ朝食の時間になったばかり。
確かに一般の面会者は少ないだろう。
ならば、と龍之介はナースステーションに向かい、天もそれについて病室を出た。
「龍」
「ん?天…どうかした?」
「大丈夫?」
「…うん。…ううん、やっぱり大丈夫ではないかな。今は…を一人にするのがすごく怖い」
たった数分一人にしただけで、こんな事件が起きてしまった。
時間にすれば数時間でほぼ無事に帰ってきたわけだが、それは奇跡と言ってもいい事態だったのだと、時が経つにつれ実感が沸いて来る。
「だろうね。ずっとそんな顔してるし、もそれに気付いてる」
「え?」
「心配そうに龍のこと見てる時があるから。多分気付いてる」
「…そ、うだよね。だもん…俺の事、俺より分かってるよね」
閉じ込めて、誰の目にも触れられないようにしたい。
ずっと、この腕の中で守りたい。
それが、軽やかに舞う蝶の羽をもぐような行為だとしても。