君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第205章 205
体感にして約15分程だが、正確かはわからない。
「ん…っ?!」
またも持ち上げられ、抱えるように連れていかれる。
隠さないという事は、それなりに人目が少ない所なのだろうか。
けれど遠くには喧騒が聞こえる。繁華街が近いのかもしれない。
少し運ばれ、エレベーターの到着音が鳴る。
という事は何かしらの建物。
けれどこんな堂々と人一人運んでいるのだからやはり人目は少ない場所なのか、これが日常の危険な場所なのかもしれない。
「こんな事して…」
「!」
「黙ってろ」
ふと聞こえたか細い声に目隠しの中で目を見開く。
運転手がいることは解っていた。
いくらが小柄とは言え、大人を攫う行為を単独で行うのは難しいだろうから。
けれど、その共犯が女だとは思わなかった。
その女の声も、どこかで聞いた覚えがあるのは気のせいか。
「ここまでやっちまったんだから、逃げらんないだろ」
「そうですけど…」
呟きながら女は黙り込み、エレベーターの到着と共にを抱え直して二人は歩き出す。
数歩歩いてとまり、カードキーを差し込む音がした。
まさかのホテルである。
繁華街から外れ、カードキーで入室するホテル。
予めチェックインはしているとして、どうやってここまで従業員や他の客に見つからずこれたのか。
そんな事を考えていれば、ベッドの上であろうスプリングのきいた場所へと投げるように落とされる。
その弾みで目隠しがずれて周りの様子を知り、そして納得した。
所謂ラブホテルだ。これなら人目には付きにくいだろう。
そして、犯人たちの顔も…
「ちゃん、久しぶり」
いつかに聞いたままのその言葉に、は犯人が鳳と分っていながらも目を見開く。
「ずっと会いたかったんだよ。ずっと見てたんだけどさ?ちゃん中々一人にならなくて…ああ、縛ったりしてごめんね。またどこかへ行っちゃったら悲しいから」
そう言いながら、鳳はの口元を覆っていたガムテープを外す。
「鳳さん…」
「あ、まだ覚えててくれたんだ?嬉しいね」
「なんでこんな…」
「なんで?だって、俺を騙してたじゃない。俺に気がある素振りを見せながら、十龍之介と熱愛?堂々と並んで番組に出て、仲良さげに一緒に住んで…許せないんだ。俺の方がちゃんの事愛してるのに」