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君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】

第205章 205




時は戻って、がスタジオを出た時間。
今日は何を作ろうか、などと考えながらビルから出た瞬間、後ろから羽交い絞めにされ口元を塞がれた。

「んぅっ?!」

軽々とそのまま持ち上げられ、傍に停まっている車へと連れ込まれそうになる。
ただの路駐だと思っていたら、これ自体が罠だったことに気付いてももう遅い。
この事態を知らせるべき手段を考え、はとっさに指輪を抜いて地面へと落とした。
気付かれる可能性はかなり低い。
けれど、万に一つでもこれを龍之介が見つけてくれれば、事件に巻き込まれたと気付いてくれるかもしれない。

「車出せ!」
「…!」

車に連れ込まれ、ドアが閉まると同時に聞こえた声。
車が走り出すと羽交い絞めにされていた拘束が緩まり、大きな布で目隠しをされ、ガムテープであろうもので手首と足首を巻かれた。
ここまでされるのかと恐怖心が湧き出るが、それよりも気になったその声は、いつだったかに聞き覚えがあった。

『ちゃん、久しぶり』
『今夜食事いかない?』

かつて、に何度も誘いをかけ、そしてに背格好が似た女性と週刊誌にスクープされた男。
その後矢継ぎ早にスキャンダルが噴出し、今ではほとんど芸能活動はしていないらしいその男の名は

「鳳、さん」

ぽつりと漏れ出たその声は、車の走行音にかき消され相手に聞こえることは無かったようだ。
だが、相手が分かった所で今のには何もできない。
どうやらかばんは一緒に車に詰め込まれたようだが、手に持っていたスマホは落としてしまったらしい。
目隠しをされているから、周りの景色も見えない。
何秒数えたら右だとか左だとか、そんな居場所を特定できるのはドラマや小説の中の話で、恐怖心に苛まれている現在、何とか左右どちらかに曲がったかを数えるだけである。
それすらもあいまいになるのは、口もガムテープで塞がれてしまったからだろうか。

「龍くん…ごめん…」

たったの3m。たったの数分。
ビルの入口からやがて来るはずのタクシーに乗るまでのそのたった少しで、こんな事になってしまった。
後悔してもしきれないが、どうしたらこの状況を打破できるのか。
そんな事を考えていれば、車が停まった感覚を覚えた。
信号での停止かと思ったが、エンジンが切られた事からそうでないと悟る。

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