君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第194章 194
前髪を軽く上げてそこにそっと口付け、龍之介はを抱きしめて目を閉じた。
「…ん…はぁ…仕事行きたくないぃ…」
翌朝、スマホのアラームで目を覚ましたは、小さく呟いた後ぬいぐるみでない重みが自らにかかっていることに気付いた。
振り向けば、龍之介が寝ている。
「……龍くん…?なんで…」
昨日、確かに怒っていた筈だ。
それだけのことをしてしまったと反省し、一人で眠りについたはず。
なのに、何故、いるのか。
「あ、仕事…」
龍之介を起こさないようにそっとベッドを抜け出し、静かに階段を降りる。
朝の準備をし、キッチンに立てば夕飯代わりに食べかけたヨーグルトの姿。
「食べてないの分かっちゃったよね…はぁ。あ、朝ごはん…龍くんどうするかな…準備しとこう、かな…」
それとも、まだ一緒に食事を取る気にはなれないだろうか。
そんな事を考えていれば、階上から?!と呼ぶ声がし、どたばたと階段を下りてくる音とともにぎゅう、と抱き締められた。
「龍くん…?」
「ごめん。昨日は本当にごめん」
「え…なんで龍くんが謝るの?私が悪かったんだよ?」
「がどれだけ俺たちを思ってるか分かってるのに、あんな事言った。酷い言葉を投げつけた。ごめん」
肩に顔を埋めた龍之介の言葉に、は小さく首を振る。
「良いんだよ。みんなや龍くんの言ったことは間違ってないから。分かってたんだよ、危ないことは。だけど、会いたかったから…自分の我儘で空港行ったの。だから、龍くんは悪くない。謝らなくていいの」
私が悪いんだから。ね。
そう言って身を離すを、龍之介は更に抱き寄せる。
「りゅ…」
「は悪くない。誰も、悪くないんだ。誰か悪いなら、俺だよ。嬉しかったのに、心配しすぎて…あんな…」
「龍くん。龍くんこそ悪くないから」
「」
キッパリと言い切るに、龍之介はそちらを見る。
真っすぐ見上げてくるは、いつも通りに見えた。
「自分が悪いって思うのは、自分の我儘だけで空港に行ったから。みんなに心配かけるの分かっててやったから。無自覚だったらそんなに怒らなくてもって言ったかもしれないけど、確信犯だから。だから私が悪い。龍くんが怒るのは当然のことで悪いことなんてないの」