君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第193章 193
「…俺、怒りそう」
それもう怒ってる。
等と言えるはずもなく、はごめんなさい、と呟いて俯く。
誰の怒声より、その一言が何よりも効いた。
「が人を思って行動するところは良いと思う。だけど、ダメだよ。を大切に思ってる人たちを悲しませることになるかもしれないことをしたんだよ。そんな事をするくらいなら、来てほしくなかった」
「…そうだね」
小さく頷き、は龍之介を見上げる。
龍之介もまたに視線を向け、そして頷いてまた前を向いた。
やがてマンションへと帰り着いた車から降りた四人は、姉鷺に礼を伝える。
「」
「はい」
「これくらい、って思ったかもしれないけど、大げさじゃないのよ。あんたを好きな人はいっぱいいるけど、だからこそ何をするか分からない人だっている。それだけは覚えておきなさい」
「はい。すみませんでした」
こくりと頷き、は一礼し顔を上げる。
「ゆっくり休むのよ」
「はい、ありがとうございます。姉鷺さんも気を付けて」
「ありがと。じゃあおやすみなさい」
そう言って車を走らせ去って行く姉鷺を見送れば、ぽふりと頭を撫でられる。
「風邪引くぞ」
「うん。楽も、天も、ごめんね。車の中でも…」
さぞ居心地が悪かったろうと苦笑すれば、気にするなと再度頭を撫でられる。
「ほら、行くよ」
「うん」
「龍も、行くぞ」
「……」
小さく頷き歩き出す龍之介に、は小さく俯いた後、ゆっくりと歩く。
そのまま四人でエレベーターに乗り込んでそれぞれの部屋の前に立った。
「みんな、ゆっくり休んでね。お疲れ様」
「も、ちゃんと寝るんだぞ」
「ご飯食べるんだよ」
「大丈夫。明日早いから軽く食べて寝るよ。おやすみ」
心配の声を向ける天と楽に小さく微笑み、は部屋の中へと消える。
「龍、お前…」
「ごめん。わかってるんだ…でも」
「龍の気持ちも分かるよ。心配する気持ちも起こる気持ちも。だけど…」
「入ろう。俺たちも」
天の言葉を遮るように龍之介は部屋の鍵を開けて扉を開く。
途端、仄かにいい香りが鼻腔を擽った。
「…飯用意してあんぞ」
「そんな暇いつあったの…」
仕事上がりに買い物をし、料理をし、洗濯物まで片付けて一人で空港まで来た。