君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第193章 193
まるで某おつかいデビュー番組を見た時のような、あの、得も言われぬ胸を締め付けられるような感動を彼らは覚えた。
「ねぇ、僕泣きそう」
「俺も」
「…」
「も、僕たちが心配なんだよ」
呟きながら天はテーブルにセッティングされていた食事を見る。
「邪魔が入りにくいから、百さんと千さんは敢えて九州まで呼んでくれた。それだけ、また僕たちに危険が及ぶことを懸念してくれてる。それは多分、も一緒。
僕たちが攫われて、テレビに出られなくなって、多分一番心に傷を負ったのは、だよ。
ファンの子たちは僕たちに何があったか知らない。僕たちがどうしてこうなってしまったのか知らない。
だけどは全部知ってる。そんな中で、あれだけ気丈に振舞って、僕たちに鼓舞を送り続けるのがおかしいんだよ。17歳の女の子がさ」
天の言葉に、楽と龍之介は顔を見合わせる。
そうだ。
どれだけ大人びていても、仕事をしっかりこなしていても、はまだ傷つきやすい心を持った17歳の少女だ。
いつも笑顔で、どんな時でも前向きな言葉をくれるから、彼女はとても強い子だと思ってしまっていた。
けれど、本当は守るべき存在なのだ。
「本当は、空港来ることだって躊躇ったろうな」
「そうだね。あの子はちゃんとわかってる、僕たちに言われたこと、姉鷺さんに言われたこと。だけど、それでも僕たちが心配で、居てもたってもいられなくて、多少なり覚悟して来てくれたんだよね。出迎えの準備までしてさ」
「…俺、何にも分かろうとせず、来てほしくなかったなんて、言っちゃった…」
呟きながら、龍之介は片手で目元を覆う。
「謝ってくる」
「、もう寝てるんじゃないの?」
「う…」
「鍵持ってんだし、大丈夫だろ」
「うん、ちょっと…行ってくる」
の部屋のカードキーを持ち、龍之介はいそいそと部屋を出ていく。
「本当に、世話が焼けるね」
「全くだな」
そんな龍之介を見送り、天と楽は先食べちゃおう、と食卓に向かうのであった。