君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第187章 187
仕事から離れ、家庭から離れた姉は、普通の女性だ。
それを知れてよかった、そう思いながらも、やはりこれまでの彼女が過り、視線を逸らす。
「私は関係者通路から入らないといけないので、これで失礼しますね。あ、お姉様」
「そう、じゃあ…。なに?」
「楽が書いてくれたら、ですけど…サイン贈りましょうか?もうすぐお誕生日ですよね」
「あら、覚えてたの?頂けたら嬉しいけれど…とても」
「私のサインも添えましょうか?」
「それはいらない」
はっきりしたものである。
むしろ好感を覚えるそのはっきりとした返答には頷き、縛り付けてでも書いてもらいます、と頷き姉に軽く一礼してその場を去る。
そのまま関係者専用の待機列に向かえば、スタッフがその場で待っていた。
「さん」
「はい」
「楽屋向かわれますか?」
「あ、いえ。公演後にお邪魔しようと思ってます。あ、そうだ…これ差し入れなんですけど、届けて頂く事って出来ますか?」
「わかりました。勿論です!中身確認だけしますね」
「お願いします」
中身は三人のそれぞれ好きな飲み物と、スタッフ分も含めた饅頭。
「スタッフさんの分、足りますかね?」
「沢山ありがとうございます。一人に個くらい食べれます。楽屋に届けておきますね」
「あはは、良かったです。よろしくお願いします」
差し入れをスタッフに託し、最後尾に並ぶ。
「明後日からまた仕事だなぁ…」
スケジュールを開き確認しながら呟く。
もうすぐFriendsDayも始まる。
大型生放送歌番組もIDOLiSH7とともに出演が決まっている。
ドラマの撮影も年末年始に放送するスペシャルドラマが何本か決まっているし、それに伴う打ち合わせやCM撮影も入っている。
「…目が回る……」
今は考えないでおこう、とそっとスケジュールを閉じ、は開場の時間を待つ。
「すみません、さん」
「あ、はい」
「あの、TRIGGERの皆さんがどうしても連れて来いと…」
「へ?あ、はい…では向かいます」
再度スタッフに声を掛けられ、は首を傾げながら頷き、列から離れてスタッフの案内の元一足先に会場へと入る。
そのまま楽屋へと向かいノックしてから扉を開けば、龍之介が出迎えてくれた。
「!ごめん、呼び出して」