君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第187章 187
「…来たぞー。FSCホール!」
開場時間が迫り、タクシーから降り立ったは、眼前にそびえるFSCホールを見上げる。
既にファンは多数集まっており、皆期待に満ちた表情を浮かべながら各々開場時間を待っていた。
「ちゃんだ」
「今日も来てくれたんだ。最近ずっとテレビ出てるから忙しいはずなのに」
の姿に気付いた数人のファンが見ていることに気付き、は微笑み手を振る。
「みんな可愛いなぁ…きらきらしてる。この時間大好きだぁ」
そんな事を呟きながら、姉鷺に口酸っぱく釘を刺されまくっているは、の名を呼ぶファンの子たちに手を振りながら関係者列へと向かう。
「…?」
が、名を呼ばれ振り向いた。
「お姉様…」
そこには、の姉がいた。
「あなた…なんでここ…ああ、TRIGGERのファンだものね、も」
「はい。TRIGGERさんにご招待いただいてきました。お姉様は…」
「もちろん、ここに居るからにはライブを見に来たに決まってるじゃない」
グレー基調の服装に身を包んだ姉は、小さく微笑み頷く。
折角京都にTRIGGERが来たのだ。
普段旅館業が忙しくて遠征が出来ない彼女なら、来たいに決まっている。
「よくお母様がお許しになりましたね」
「お父様がたまには行ってらっしゃいって言ってくださったのよ。最後の自由行動かもしれないけど」
「最後…?」
「来週お見合いするの」
姉のその言葉に、はなるほどと頷く。
「…そうなんですね。でも、良いんですか?それで…」
「まぁ、仕方ないわよね。私は跡取りだし、お母様の望む相手はことごとく貴女の方がお気に入りだし」
「御堂さんのどこがいいのか私はさっぱりわかりませんけどね」
「…それは私も」
「え、お姉様もなんですか?てっきりお好きかと…」
初めて姉と意見が合い、は驚きながら姉を見る。
「顔は嫌いじゃないけれど…」
「わかります。性格が…ポンコツ過ぎる」
「やっぱり楽様みたいな人じゃないと…」
「そうですね。私も龍くんみたいな人じゃないと無理。龍くんじゃなきゃ無理」
「…推しが被らなくて良かったわ」
「そうですね」
こくこくと頷き合い、は姉を見る。