君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第179章 179
不意打ちだった。
まさかだった。
環の顔が近づいて、唇に触れたその感触に、は目を見開いて僅かに身を引いた。
「たまき…?」
「…できる?」
「できない…龍くんとしかしたくない」
「だよな…。ごめん」
「謝んないで。私もごめん。どうしても、答えられない」
私は、龍くんしか愛せない。
そう呟き、は環を見上げる。
「怒って良いよ、環」
「好きだから怒れねー」
「優し過ぎるってば」
「しょーがねーじゃん。むしろっちが怒るとこだろ」
「怒れない。大事な友達だから」
呟きながら、それでも唇を撫でるに、環は小さく息をつく。
「友達かー」
「友達だー」
「…まー、いっか。絶交とかじゃねーし」
そう言って環はよーし、と立ち上がり伸びをする。
ぎすぎすした空気にならないのは、環の心の広さのお陰なのかもしれない。
「クッキー、ごちそうさん」
「うん。龍くんに伝えとくね」
「おう。…またなー」
手を振り楽屋を出ていく環を見送り、は扉が閉まるなり頭を抱える。
「…報告、すべきですよね…」
唸りながらスマホを手に取り、は小さく息をついて電話をかける。
「ふー…」
『もしもし、?』
「龍くん、お疲れ様。ごめんね、突然…」
『大丈夫だよ。…大丈夫?』
「ん…溜めてても仕方ないから、ズバッと言うね」
電話越しなのに、すぐにの異変に気付くところはさすがである。
小さく深呼吸し、は口を開いた。
「環に…キス、された」
『…仕事…じゃないよね』
「うん…」
『…わかった、』
「はい…」
『どうして、そうなっちゃったの?』
「環が楽屋に来て、龍くんとどっちの方が好きか聞かれて…」
事の経緯を話せば、龍之介が小さく息をつく。
『、環くんがを好きなことは解ってたよね』
「うん…。だけど、友達として…接してれば、こんなことにならないと思ってた。環もそう思ってるって…完全に油断した私が悪い。ごめんなさい」
『帰ってきたら、またゆっくり話そう。ね?』
じゃあね、と電話を切り、盛大にため息。
「めっっっちゃ怒ってた…」
かと言って隠すべきではないし、隠しておいて後から何かしらで知られた方が怒りは大きいだろう。