君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第19章 19
「今止めても、反発して迂闊なとこで変に写真撮られる可能性もあるじゃない。なら、確かにどちらもリスキーではあるけど、認めた上で、バレない様に慎重に行動しなさいって釘を刺した方がマシな気がしてきたのよ」
姉鷺の案に、万理は今度はなるほどと頷く。
まだ淡い恋心の内にしっかりと反対しておけば、二人の心に鍵をかけることも可能だったかもしれない。
ただ、TRIGGERは個々でも忙しく、小鳥遊事務所は人員が少ない。
それ故に二人を見続けることが出来なかった。
その間に二人の心は寄り添い、繋がってしまった。
それを無理やり引き離すことの危険は、経験上姉鷺の方がよく分かっているだろう。
「付き合わせて、合わなければ勝手に別れるだろうし、その時、傷なりなんなりをケアするのが俺たちマネージャーの役目、ってことですか」
「あら、ちょっとずつ分かってきたんじゃない?新米マネージャーさん」
「お陰様で」
苦笑しながら頷く万理から離れた場所で、と龍之介はオールアップ祝いの大きな花束を渡されている。
「このまま写真撮影入りまーす」
「はーい」
「さん、メイク直します?」
「直した方がいいですか?」
「ううん、大丈夫。あ、リップだけね。十さんも拭いた方がいいかも。…ん、超可愛い」
「だそうです!」
メイク担当との掛け合いに笑いながら、撮影を開始するという声に反応して駆け寄ってきた万理に花束を手渡す。
「事務所飾るね」
「ありがとうございます!お願いします!」
「龍、こっちも受け取るわ」
「お願いします」
花束を渡し、は龍之介の差し出す手を取り教会の石段を上る。
「さて、どう撮ろっかなー」
にやにやと笑う監督に、思わず苦笑を浮かべると龍之介。
思えば二人の想いが止まらなくなったのは、監督の思い付きで仕込まれたキスシーンからだ。
ほのかに感じていた恋心を燃え上がらせた原因である。
「取り敢えず、腕組ん…でるね、もうね」
「まずこの辺りからかな、って」
「流石ちゃん。よく分かってるねぇ」
カメラマンに指示を出し、監督は頷く。