君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第166章 166
だって、家族の大切さは分かっている。
自らも、育ててもらったことに感謝はしている。
けれど、だからこそ、傷付けられたその気持ちをすぐに方向転換することは難しい。
自身は壮五の全てを知っているわけでは無いが、それでも彼が傷付けられ、家族に自らの強い思いを踏みにじられたことは解る。
環とは色々話してはいるが、それがほんの一部だとしても、どれだけ実父に傷付けられたかはわかる。
龍之介の言う通り、いつかはわかり合えるかもしれないが、それが話せばわかるレベルにはまだ至っていないことを、知って欲しかった。
「でも私は少なくとも、龍くんたちより長く壮五さんと環と一緒に居たから、壮五さんが、自分の気持ちを押し隠して人にばかり気遣ってしまう所も、環が本当は何より家族…っていうか、理ちゃんを大切にしたいことも知ってる。
見ただけじゃ、話しただけじゃわからないこともあるって、龍くんにも知って欲しかった。
自分とも重ねて、ちょっと冷静では無かったなって反省してる。ごめんね」
「俺の方こそ、分かったようなこと言ってごめん…」
龍之介の言葉に小さく首を振り、そっと抱き着く。
「龍くんなら、ちゃんと言ったらわかってくれるって思った。ちゃんと伝えたら理解してくれるって…ありがとう」
抱き着いて、そう微笑むは可愛い。
可愛いのだ。
だが
「み、見えない…っ」
「残念だったな、龍」
「可愛いよ、のその笑顔」
食器を洗っている龍之介の後ろから抱き着いているため、その可愛い可愛い笑顔が見えない。
ぐぅ、と唸りながらも、洗っててくださーい、頑張れー!と後ろから応援され、龍之介は泣く泣く食器を洗うのであった。
「、明日学校?」
「午前だけ。午後からは…なんだっけ?」
呟きながら龍之介からそっと離れスマホを取り出す。
「あー…あぁ、はいはい。FriendsDayの打ち合わせと、歌番組の収録だ」
「割とハード…」
「ねー。歌番組の共演は…うげ、ZOOLもいるー…席と楽屋離してくれないかなぁ…」
「楽屋の番しに行くか」
「いやいや、TRIGGERも明日打ち合わせでしょ?」
くすくす笑いながら、IDOLiSH7いるから大丈夫だよ、とは頷く。