君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第165章 165
実父のせいで母親を失い、施設に預けられ、妹の理と離れ離れになってしまった。
理もまた、養父の借金の肩代わりに九条の元へ行ったようなものだ。
実の親のせいで悲しい思いをした環に、龍之介の言葉が響くはずはなかった。
そしてそれには、にも響かないものだった。
「確かにさ、家族の仲が良いのは素敵なことだよ。分かり合えるなら、それは一番だよ。だけど…そうなれない家族もいるの。龍くんが一番傍で見てたでしょ?龍くんが、私が家族に愛されることを期待するのは難しいって、言ったじゃん…」
「それは…」
「私には龍くんがいる。みんながいる。だから、家族とわかり合えなくても幸せなの。それと同じように、環にも、壮五さんにも、仲間や友達やファンがいる。愛してくれる人がいる。それじゃ、ダメなの?」
のその言葉に、龍之介はを見て、そしてごめん、と呟く。
そんな中、壮五がゆっくりと口を開いた。
「でも、僕は今まで、両親と向き合ってこなかったから…否定され続けて、話してもわかってもらえないと思って、分かり合う努力をしなかったかもしれない…」
「なんで努力しなきゃならないんだよ。俺たちじゃなくて、向こうがするべきだろ?!」
「四葉環、ちょっと来て」
「なんだよてんてん!」
「が悲しむから。落ち着いて、来て」
天が、環を連れて部屋を出ていく。
は、そんな二人を見送ってから龍之介に視線を向けた。
「…」
「分かるよ。龍くんはみんなに幸せでいて欲しい人だって。でも、背景を知らないで、分かり合えるって思いこんじゃダメ。壮五さんは…特に周りのことを受け入れよう、受け入れなきゃって思っちゃうから。押し付けちゃダメなの」
「そうだったんだ…ごめん、壮五くん」
「いえ!確かにちゃんの言う通り、僕は周りに合わせて受け入れていくのが良いと思ってしまうので…。十さん、謝らないでください」
よく見てるね、ちゃん。と壮五に言われ、は苦笑しながら、私も似たようなものですから、と苦笑する。
「大変ですよね、親が金持ちだと」
「そっか、ちゃんも…。ほんとにね」
親を切り離したような言い方で苦笑するに、壮五も似た笑みを浮かべる。