君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第165章 165
目下の問題はライブ会場。
うーん、と唸る中、大和はガサゴソとポケットを漁る。
「なら、これ使ってくれ」
そう言って大和が差し出したのは厚みのある封筒。
聞けば、父親から預かった現金らしい。
「大和さんの為に使って欲しいから、千葉さんが送ったものでは…?」
「俺が持ってても使い道ねぇしさ」
「気持ちはとっても有難いけど、大きな場所を借りるには数千万が必要になってくるんだって」
そんな龍之介の言葉に、それもそうか、と皆考え込む。
「あの、それ僕に預けてもらえませんか?これを元手に資金運用して、大きなホールを借りれるくらいにはなるかもしれない…」
そんな中、壮五のその言葉に、一同が視線を向ける。
「そんなこと出来るの?壮五さん」
「小学生くらいから、資金運用の練習をさせられていたんだ。だから、上手くいけば…」
「ほえー、凄い」
「ありがとう壮五くん。でも、それよりも年内に唯一空きがあるFSCホールを借りられないか口添えしてくれないかな?」
微笑む龍之介に、壮五はそちらを見てから軽く俯く。
「僕は、勘当を受けている身です。何より、口添えしても耳を貸してくれるかどうかさえ…」
「そうか。でも、本当に言いたいことは別なんだ。君は、俺にはわからないと言ったけど、やっぱり家族は分かり合えると思っ…」
「…龍くん、そんな事言わないで」
龍之介の言葉に、が呟く。
そっと龍之介の膝から降りて、首を振った。
「…」
「血が繋がってれば、分かり合えると思う?私と違うから?」
「……ごめん。でも、勘当されたままで…話し合わずに分かり合えないままでいいのか、って…思ったんだ」
「そーちゃんちは!そーちゃんにひどい事したんだぞ!なんで話し合わなきゃいけねーんだよ!!」
「環っ!やめて!」
じっと、龍之介の言葉を聞いていた環が立ち上がり、龍之介の襟をつかむ。
の制止も聞こえないようで、そのまま言葉を続ける。
「子供の為にならない親なんて、いくらでもいるよ。リュウ兄貴も他の奴らも、そんなこと知らないから家族仲良しが一番みたいに言うんだよ」
「環…」
龍之介の襟をつかんでいた環は、そのまま手を離し、顔を顰めながら俯く。