君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第162章 162
そうすれば、は凍った瞳を瞬く間に溶かし、小さく頷いた。
けれど、次に小さく首を振り龍之介に縋るように抱き着く。
「龍くん…私……やだよ。あんな頃に戻りたくない…」
「絶対に戻らせない。俺がずっと傍で守るから。大丈夫」
「……うん…」
初めて会ったとき、その朗らかな柔らかい笑みに見惚れた。
何て可愛い子なんだろうと思った。
きっと、色んな人に愛されて育ってきたのだと思っていた。
出自を聞き、育ちを聞き、当時のその笑顔は防衛の手段だったのだと、改めて思い知った。
にこりと笑って、いう事を聞いていれば、叩かれないから。
母の望みに応えていれば、そこで生きていけるから。
いつ、一人になっても大丈夫なように準備をしていたのも、一人になっても、実家に頼りたくないからだった。
「もう大丈夫。絶対に、を幸せにするから」
「もう充分幸せだよ」
そう言って見上げてくる。
再度頬を撫でれば、笑顔が浮かぶ。
「…」
「心配かけちゃったね。でも私、本当に幸せなんだよ。龍くんに頼ってばっかでごめんねなんだけど、でも、龍くんの傍でだけは本当に安心できて、幸せって実感するの」
もう、一人で生きていく必要ないって、思わせてくれてありがとう。
そんなの言葉に、龍之介の涙腺も緩んでしまう。
「うん、もう一人で頑張らなくていいから…っ。家からも、他の何からも、のこと守るよ」
「うん、嬉しい。本当に幸せだよ?ありがとう、龍くん。愛してくれて。愛してるよ」
「俺も愛してる。が好きだよ。心から、大切に思ってる。俺のこと、受け入れてくれてありがとう。守らせてくれて、ありがとう…っ」
龍之介の涙を拭い、幸せそうに微笑むは本当に美しい。
そんなの眼にも溜まっている涙を拭い、龍之介は軽く顎を掴んで口付けた。
「ふふ、幸せ」
「俺も幸せ。ずっと、愛してる」
「私もずっと愛してる。…卒業式の日、結婚しちゃおっか」
「あはは、それいいかも。それまでに、事務所戻らないとね」
「頑張れ。私も卒業できるように頑張る。お仕事も、たくさん楽しむ」
「うん、二人で頑張ろう」
微笑み合い、最後唇が重なれば、今度は龍之介に着信がついた。