君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第162章 162
電話口から虎於の声が聞こえ、龍之介はスマホをちらりと見る。
唇をゆっくり離し、軽く口付けてから通話に答えた。
「虎於くん」
『なんだよ』
「は、俺の大事な子だから」
そう言って、龍之介がスマホを切ろうとすれば、が手を差し出す。
何か言いたいことがあるのだろうと手渡せば、にこりと微笑み口を開いた。
「御堂さん。もっと聞きたいですか?」
『…お前の喘ぎ声か?はっ、聞かせろよ』
「残念。ここから先は十龍之介しか聞けないの。私は貴方に興味すらない。二度と、私に関わらないでくださいな」
そのままブチッと通話を切り、番号をブロックする。
これで何か収まるわけでは無いだろうが、ひとまず落ち着いてくれることを祈る。
そのままはついでに母親の番号もブロックした。
「いいの?お母さんまで」
「私の気持ちが落ち着いたらブロック外すと思うけど…今は無理」
子供っぽいけど。
そう苦笑しながらはスマホの画面を消してポケットにしまう。
そんなの頭を撫で、龍之介は先程違和感を覚えたことを聞かねばと口を開いた。
「…」
「ん?」
「女将に叩かれたの、今日が初めてじゃないよね?」
「っ……」
問われたの反応から、肯定を示していることはよくわかった。
そんなの反応に、龍之介は優しく彼女を抱きしめる。
「……なんで…」
「が叩かれた時、慣れてるって顔してたから」
それが強がりだと、他人にはそう思わせることもできたかもしれない。
けれど、龍之介はの表情を繊細に読み取れるようになっている。
だから、あっさりと気付かれてしまった。
「…小さい頃から……」
「うん」
「お稽古…行きたくない、とか…。泣いたら、泣くなって…」
「…うん」
「でも、顔叩かれた、のは…初めてだった…」
いつも、服で隠れるとこ叩かれてた。
そう呟き、は龍之介を見上げ、その表情に龍之介はぞくりとした。
感情を隠しきった、冷え切ったその瞳に、凍り付きそうになった。
「、俺だよ」
「……龍くん」
「うん、そう。大丈夫だよ、ここにを傷付ける人はいないから」
だから、安心して。
の頭を撫で、そっと頬を撫で、微笑む。