君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第161章 161
「十さんとこやったら、私も安心やわぁ」
「…は?」
「若女将が、中々結婚せぇへんやろ?」
「お姉様、まだ二十歳ですよ…?」
「もう相手見つけんと、結婚までいくらかかるか分からんやないの」
「……龍くん、帰ろう」
「うん、そうだね」
これ以上話を聞いていたら、おかしくなりそうだ。
「、まだ話は終わってへん」
「すみません、予定が詰まっていますので」
を追おうとする女将の前に、万理がにこりと微笑み立ちはだかる。
ガッツリ営業スマイルである。
が女将から顔を逸らし、龍之介はそんなの頭を抱きかかえ、もう見なくていいと伝えるようにそっと頭を撫でながら歩き出す。
「失礼します」
たちがある程度離れたことを確認してから、万理も軽く会釈して龍之介とに続く。
「…」
「ステータスでしか、人を見ないんだってわかってたけど…」
いざ、それを自らにぶつけられて、龍之介への自分の想いや、龍之介の自分への想いも、踏みにじられた様な気がした。
必死に涙を堪えるをひとまず車に乗せて、万理を見る。
「虎於くんとの仕事って、まだありますか?」
「音楽番組で一緒になることはあるね…」
「他のグループやアーティストさんもいるから、その辺りは大丈夫かもしれないですけど…。しばらくZOOLとの仕事は控えた方が良いかもしれないですね。特に虎於くんは、背後にお母さんの影を感じてしまうかもしれません」
「うん。さっき事務所にも色々伝えたんだけど、社長も避けた方が良いって言ってたよ」
万理の言葉に、小鳥遊が龍之介を同じ判断をしてくれたことに、安堵する。
「万理さん…」
助手席のウィンドウを開け、がそっと声をかける。
こんなに弱弱しいは、正直初めて見たかもしれない。
「すみません、今日こんな…」
「いつもだけど、今日は特に、は何も悪くない。それより俺は、がちゃんと弱いとこも俺に見せられるようになったことが嬉しいよ。たまには俺にも相談してね」
「ありがとうございます。今日はホントに、助かりました」
「君を守るのが俺の役目だよ。だから気にしない。また明日、頑張ろうね」
「はい…っ」