君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第159章 159
「一言でもそんな事言いました?」
腕を組み、小さく息をつけばそろそろ撮影を始めると声がかかる。
今回のテーマは豪華なクリスマス。
ホテル王の息子と高級旅館の娘である、虎於とにピッタリだとオファーが来たらしい。
「じゃあまずは、パーティーで御堂くんがさんを見つける所から。エキストラさんにももうすぐ入ってもらうからね」
「はい」
「…………。いっ」
返事をしない虎於を見上げてから、ガッと足を踏む。
「おっ、ま…」
「返事くらいできないんですか?それでも大人?」
「…わぁったよ」
そんなにスタッフ苦笑。
その後は不遜ながらも一応返事をする虎於に、周りのスタッフはひそかにを称賛である。
「エキストラさん入りまーす」
扉が開かれ、エキストラが十数人入って来れば、はそちらに向かい一礼。
「皆さん、本日は宜しくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
エキストラの輪に入り、時間まで出来得る限り言葉を交わす。
円滑に撮影が進むためにも、コミュニケーションは欠かしたくない。
「は…いつもこんなことを…?」
「はい。あの子は役の大きさに関係なく、演者は勿論、スタッフにも気配りを欠かしません。ホールの端に色々ある差し入れも、自分の給料に見合ったものをなるべくたくさん差し入れてます」
周りに愛される分、しっかり返そうと努力する良い子ですよ。
そういう万理に、女将はを見て頷く。
「位置確認から始めようか。はい、グラス持ってー」
「はーい。かんぱーい」
「早い早い。さん」
「すみません…条件反射で…」
くすくす笑う周りにもまたくすくす笑いながら、立ち位置確認を始める。
「御堂くんがここ。さんはここで、各々のグループと歓談。御堂くんがさんに気付いて近づく、と」
「はい」
「で、さんが御堂くんに気付いて、恋に落ちてください」
「もう落ちてんだろ?」
「ご冗談を」
はっ、と鼻で笑い、次いではにこりと微笑む。
「わかりました」
「じゃあ、まずリハから行きます。皆さん立ち位置付いて下さい」
と虎於、エキストラがそれぞれの位置についたことを確認し、リハが始まる。