君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第156章 156
向かい合い、手を取り合い、微笑み合い、額同士を合わせながら言葉を交わす二人は、そのまま楽に視線を向ける。
「無自覚かよ…怖ぇよ」
ふたりにとっては、これは最早日常であることは確かである。
「…ちゅーは控えたよ。楽いるから」
「そりゃ気遣いどうも。で、天はまだか?」
「うん。…来れるかな」
「どうだろうな」
「ああ…天も出迎えたかったけど、私そろそろ行かないと…」
腕時計で時間を確認し、は小さく項垂れる。
「帰りは20時くらいかな。なるべく早く帰れるように頑張ってくるね」
「うん、いってらっしゃい。気を付けてね。例のスタジオでしょ?」
「うん…あれからあのスタッフさんは見てないけど、なるべく気を付ける。龍くん、ちゅー」
「うん。何かあったら言ってね。…はは、可愛い。行ってらっしゃい」
「ん…」
キスを強請るに微笑み、龍之介はそっと口付ける。
何度か軽く啄んでいるうちに、その口付けは深まった。
「っ、ん…へへ、いってきまーす」
何とも幸せそうな笑みを残し、は仕事へと出かけた。
リビングへ戻った龍之介は、楽にコーヒー飲む?と問いかけた。
「サンキュ。なぁ、龍」
「ん?なに?」
「…お前にめろめろだな」
「俺がにめろめろな気もするけど…可愛いよね、」
コーヒーを入れながら、くすくす笑い龍之介は玄関の方を見る。
「ところで、例のスタジオって?」
「ああ、楽がとドラマ撮ったスタジオなんだけど…、転んだでしょ?」
「ゲラゲラ笑ってたって奴か」
「うん。怪我は大したことなかったんだけど、その時、スタッフに押されたのかもしれないって、言ってたんだ」
「はぁ?なんだよそいつ」
「も確証はなかったから、その場は何も無しで納めたんだけどね。次何かあったらって思うと、心配なんだ」
入ったよ、とマグカップを手渡され、楽は礼を言いながら何かを考える。
「そのスタッフ、女か?」
「うん。そう言ってたよ。…心当たりあるの?」
「やけにに当たりがきついスタッフはいた。は気にしてなかったけどな」
「そっか…その人なのかな」
カップを握りこみながら呟く龍之介は、ひどく心配そうだ。