君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第154章 154
『何かを欲しいと思って歌ったことは、一度もありませんでした。報われないと思ったことも…。だけど今夜、本当にたくさんのものを貰った気がします。皆さんの気持ちが嬉しかった。…ありがとう…うた、歌ってて良かった…』
「すみません、関係者以外立ち入り禁止…さん?」
「この子は関係者。通してあげて」
仮設テントの傍に控えていたスタッフに止められるが、後ろから姉鷺が声を掛ければ、テントに招かれる。
天と共に、涙が止まらなかった。
『悪い、撮らないでやってくれ』
『大丈夫だから。また会えるからね』
『お前らを、またゼロアリーナに連れていくからな!!』
そんな楽の言葉に、ファンは泣き出したり、喜んだり、様々だ。
人が集まり出し、混乱を避けるためにTRIGGERの3人はテントへと捌ける。
「?!」
「みんな、お疲れ様!ほら、早く拭いて!風邪引いたら大変だよ。温かい飲み物いっぱい持ってきたから、身体温めてね!」
タオルを3人の頭にかぶせ、天の前に立つ。
涙は、3人が戻る前に何とかひっこめた。
「天」
「」
「ありがとう、泣いちゃうくらい、私たちの事愛してくれて。大好きだよ」
「泣いてない。これは雨」
そんな照れくさそうな言葉に、のみならず、龍之介も楽も、か、かわいい…と顔を覆う。
「可愛すぎるよ天…」
「可愛いのはだけでしょ」
ふん、とそっぽを向く天にくすくす笑い、は龍之介を見上げる。
「あ、ちゃんと拭いて下さーい」
「ん、はは。ありがとう」
懸命に背伸びしながら龍之介の頭を拭くに笑い、龍之介はその場にしゃがみ込む。
細い太腿が目の前である。
「カッコ良かったよ。最高…こんな拙い言葉しか出ないのが悔しいくらい、かっこよかった」
「ありがとう、」
微笑み見上げてくる龍之介がたまらなく愛しくて、も彼の前にしゃがみ込む。
「龍くん、愛してる」
「俺も愛してるよ」
頭を拭くタオルを龍之介ごと自らに引き寄せ、そのまま口付ける。
同時に抱き寄せられ、そっと口付けを返された。
「泣かないの」
「これは雨」
「マネしないでよね」
こつり、と頭を軽く小突かれ、見上げればくすくす笑う天。