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君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】

第154章 154




まだ、ステージが設置してあるだけ。
誰が何をするのかすら定かではないこの場所を、立って眺めているのはだけだ。

「降って来ちゃった…」

ぽつり、と一粒の水滴を感じ、空を見上げる。
傘を開けば、雨足が少しだけ強くなった。

「姉鷺さん…」

レインコートを着た姉鷺が、幕を上げる。
そこに描かれているTRIGGERの姿に、徐々に人の足が止まる。

「え、TRIGGER?」
「こんなところで…?」
「落ち出したら、早いよなぁ」

そんな言葉が耳に届く。
人の世の評価なんて、そんなものだ。
上に居れば持て囃されて、下に行けば行くほど酷評されていく。
遠くでバンの扉が開閉する音が聞こえ、視線を向ければ、雨に降られても尚、真っ直ぐに前を向く三人の姿。

『こんばんは、TRIGGERです。告知もないのに、来てくれて、足を止めてくれてありがとう』

天の微笑みに、はうっかり涙腺を緩めてしまう。

「」
「姉鷺さん…」

の姿にいち早く気付いたらしい姉鷺が、そっと隣に立つ。

「来てくれたのね」
「はい。ここは、来なくちゃいけないと思ったんです」
「ふふ、さすがね」
『早速ですが、聞いて下さい』

曲名を告げると共に、音楽が流れだす。

「なんで…なんであの子たちがこんな所で…なんでよ…」

涙を零し、号泣しながらステージを見つめる姉鷺に、は小さく首を振る。

「変わりませんよ」
「どこがよ!」
「大きな会場でも、こんなちっぽけなステージでも、TRIGGERのカッコよさは、魅力は、1ミリも変わりません」
「…」
「いつだってどこだって、TRIGGERは最高なんです」

一曲。
たった一曲で終わってしまうライブ。
だけど、こんなに人を引き付ける。
悪態をついてた人だって、魅了しちゃう。
そんな彼らがすっごくカッコイイ。
彼らが愛してくれるのが分かるから、ファンはもっと貴方たちを愛してるの。
だから、いつだって声援を送りたくなる。

「TRIGGER!!大好きだよー!!」
「もう1曲歌ってー!!」
「TRIGGERー!!」

そんな声援に、天はくしゃりと笑い一礼し、小さく嗚咽を上げる。
そんな天には目を見開き、そのままステージの脇へ走り出した。

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