君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第154章 154
TRIGGERの路上ライブがゲリラ的に開催される日がやってきた。
ミューフェスの日以来、TRIGGERはテレビから姿を消した。
今まで以上に、TRIGGERの話題はタブー視され、収録ではTRIGGERの話題を出せばカットされ、生放送でうっかり呟こうものならガッツリ注意を受け、生放送に出られなくなるかもしれないという噂がまことしやかに流れていた。
それでも、TRIGGERはまだいる。
まだ歌っているんだ、と伝えるためにこれからは小規模なライブハウスなどで活動していくことになるそうだ。
その第一歩として、今日の路上ライブである。
「雨…降りそうですね」
スタジオの楽屋から、が外を眺める。
撮影は順調に進んでいるため、予定されている路上ライブの時間には間に合いそうである。
「そうだね。雨は…避けられないかもしれない」
「温かい飲み物、準備しとこっかな」
「さーん、出番です」
「はーい!」
スタッフに呼ばれ立ち上がれば、いつもは楽屋で事務仕事をしている万理も一緒に立ち上がる。
「万理さん?」
「社長命令。いや、俺もそう思ってるけど。ここ…例のスタッフがいる所だろ?」
その言葉に、ああ、と頷く。
偶然か故意はわからないが、スタッフとぶつかり、が転んで傷を負ったスタジオである。
小鳥遊も気にしている様で、出来る限り万理についていて欲しいと頼んだようだ。
「ありがとうございます」
「うちの大事なお姫様しっかり守らないとね」
にこりと微笑みの頭を軽く撫で、撮影へ促す。
「さん入ります!」
「よろしくお願いします!」
「じゃあ、早速カメラリハ入りますー!」
予定されていた撮影は順調に終わり、が帰り支度を整えれば外はぎりぎり曇りを保っていた。
「…今にも降り出しそう…ステージ滑らないといいけど…」
「雨で中止なんてこと、TRIGGERはしないもんね」
「はい、怪我だけしない様に、祈ってます」
頷けば、送るよ、と微笑む万理に礼を伝え、龍之介から聞いていたライブの会場へ向かう。
堂々と真正面から見るわけにいかない。
TRIGGERはまだ車の中だろう。
見つからない様に眼鏡をかけ、辺りの様子を窺う。