君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第2章 2
すぐに握手を求められていることに気付き、も手を差し出しそっと龍之介の手に触れれば、キュッと握られた。
瞬間、未だ感じたことのない、胸の高鳴りを覚えた。
何とも言えない、締め付けと動悸。
こんな風に、いわゆるときめきを覚えたのは初めてである。
パッと龍之介を見上げれば、彼もなぜか固まり、をじっと見ている。
「……………」
「……………」
「?おふたりさーん」
握手をしたまま見つめ合うと龍之介を不思議に思ったのか、プロデューサーがそっと声をかける。
その声にハッとしたのか、二人はようやく動き出した。
「あ、ご、ごめんね!!」
「いえ!こちらこそすみませんっ!」
あはは、あはは、と二人で乾いた笑いを浮かべながら互いに頭を下げ、各々指定された席へ着く。
が、主役とその相手役。
席は当然隣同士である。
若干の気まずさを覚えながら二人は席につき、再度ぺこりと頭を下げた。
他の出演者もまだ全員そろっていない。
黙り込んでいるのもどうかと思いながら、は助け船を頼もうと紡を見た。
「あんたんとこの新人、良いじゃない。どこで見つけたの?」
「社長が渋谷で見つけたそうです」
「小鳥遊社長、ホント見る目あるわ…。うちのスカウトマンもあの子見かけたら絶対声掛けたはずだもの。でもドラマ初めてって聞いたけど?」
「はい、ちゃんと名前のあるメインキャストは初めてです」
「龍の足、引っ張らないでちょうだいよ?」
「はい、そこはきちんとやって貰えます!」
紡を見れば、龍之介について来たマネージャー、姉鷺と盛り上がっている様子。
これでは助けを求められぬ。
ならば自分でどうにかするしかない。
「十さん、私、この間のTRIGGERのライブお邪魔させてもらったんです」
「そうだったんだ!ありがとう!」
「IDOLiSH7のみんなと一緒に行ったので…あの、そのあとにご迷惑かけてしまったんですけど、すみませんでした」
そう言って頭を下げるに、龍之介は微笑み大丈夫だよ、と優しく声をかけた。
「あれ、社長やあそこにいる姉鷺さんは怒ってたけど、俺は全然気にしてないよ」
「十さん…」
その柔らかい言葉と笑みに、は安心したように緊張していた表情を緩めた。