君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第131章 131
「良かったです」
「じゃあ、そろそろレストランの撮影時間も近いし、移動しよっか」
「はーい」
園内の移動は基本徒歩。
スタッフがガードして一般客が近付けないようにはなっているが、流石人気アイドルと人気女優。
行く所行く所で声が上がる。
「十龍之介と!」
「やっぱ熱愛ってホントだったの?!」
「でも、撮影っぽいよね」
「あー!でもお似合い!カップルコーデもいい!」
エロエロビーストと清純派女優。
スタイルは正反対の二人だが、中身は割と似ていることが滲み出ているのか、二人の関係を肯定的に見る意見はやはり多い。
有難いことではあるが、いざ本当に現在の関係を公表したらどうなるのだろうか。
公表すれば、付き合っていた期間なども聞かれる。
こうして両片思いで通している現在も実際は付き合っていたと聞いたら、ファンは二人を、嘘つきだとガッカリしないだろうか。
「?」
「…っ、あ、なぁに?」
「なんか考え込んでたから」
「うん…みんながこうして好意的に見てくれてるのに、嘘ついてるんだよなぁ…って思って…」
「ああ…」
「かといって、簡単に公表できるものでもないし、難しいなーってふと考えちゃった」
苦笑交じりに呟くの頭をそっと撫で、の手を取り繋ぐ。
「そうだね。出来るだけ、早めに発表できるといいね」
「うん、そうだね。両事務所から公表オッケーが早く出るように、もっと頑張らないとね」
「はもう頑張り過ぎ」
「龍くんとのことならもっと頑張れるよ」
「俺も頑張れる。でも、が倒れたりしたら悲しいよ」
龍之介の言葉に、それは確かに、と頷く。
「そうだね。気張り過ぎず、締めるとこ締めて緩めるとこ緩めてやっていけるようにしていこうかな」
「うん、一緒にゆっくりやって行こう」
こくりと頷き、龍之介を見上げれば温かい笑み。
この笑顔が曇らないよう、目いっぱい愛したいと、常日頃思わせてくれる。
そんな人に出会えた自分は多分ラッキーが過ぎている。
そんな事を考えていれば、目的の店についたようだ。
「ここでお昼にしたいと思いますー」
「はーい」
スタッフに席に案内され、向かい合わせに座る。
普段の二人での食事は横並びが多いから少しばかり新鮮だ。