君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第126章 126
「…私が悪いのかな」
「は悪くないよ」
一方、車に乗り込んだ二人は現場から少し離れた公園の駐車場に車を停めて顔を見合わせた。
「楽が…あんなこと…」
「楽も、の事好きだったんだよ。楽だけじゃない。を好きな人は沢山いるんだ」
龍之介がの頬に触れ、自らを見るようそっと促す。
じっと見上げてくるその瞳に、自らが映りこんでいることに心底ほっとする。
「私は龍くんしか好きになれないよ」
「うん、知ってる。が心から俺を思ってくれてるのは分かってる。俺も同じだよ」
「なのに…ごめんなさい。あんな…ごめんなさい」
涙を溜め、呟くの目元をなぞり、龍之介はそっと抱きしめる。
「大丈夫、謝らないで。多分楽も、と初めて共演した俺みたいな状態なんだよ」
の人を引き込む演技力によって、自分の感情が役によってなのか、己自身のものなのかわからなくなるのだ。
龍之介は撮影前からに好意を持ち、撮影後もその気持ちに1ミリも変化がなく、もまた同じ気持ちだったから今こうして傍に居るが、楽はどうなんだろうか。
「役のせいで…戸惑ってる、ってこと?」
「そう。だから、の上手すぎる演技力に驚いてるだけだよ。でも…」
そう言って呟く龍之介の瞳に宿った炎。
それは正しく嫉妬だ。
「それとこれとは別なんだ。が他の男に触れられてるの見るだけで、気持ちが抑えきれなくなる」
「龍くん…」
「仕事の中でならまだ我慢できる。でも、それ以外は楽だろうと天だろうと、関係ない。に誰も触れて欲しくない」
「…ごめんなさい」
「に怒ってないよ。を責める気なんてないんだ。愛してるから」
嫉妬という怒りが溢れているのに、は龍之介を怖いとは微塵も思わなかった。
それ以上に、愛しい気持ちが向けられているのが分かって、もまた愛しい気持ちが溢れ出てくる。
だから、から動いた。
「龍くん、そっち行っていい?」
「ん、おいで」
の言葉に龍之介は運転席のシートを一番後ろまで下げて、に手を差し出す。
その手を取り、龍之介の膝に腰を下ろした。