君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第126章 126
楽の言葉にありがとう、と微笑みつつはそちらを見上げる。
「でも、そんな迷惑かけられないよ」
「龍だって仕事帰りにわざわざ車変えて迎えに来るんだろ?そっちも大変じゃねぇか」
「…うん、そうだね。私が一人で帰れたらいいんだけど…」
「そんなん危ねぇだろ。…まぁ、大神さんや紡がこれねぇときは龍が来るのが一番なんだけどよ。龍も厳しい時は俺が送ってってやるから」
「ありがとう、楽」
嬉しそうに頷き微笑むは、自分を全く男として意識も警戒もしていないのだと突き付けているように見える。
だから、魔が差した。
「」
「ん?…っ、楽…!」
の腕を掴んで、顎に指をかけて、驚いた表情のの唇を奪う。
が楽の胸を押し、抵抗するのを力の差で押さえつけて抱き締めた。
離したくない。
自分のものにしたい。
今まで感じたことのない劣情が、楽を襲う。
「やめて…楽っ」
「!!」
まだ抵抗しているを力ずくで抱き締め、再度顎を掴めば、を呼ぶ声が聞こえ、腕の中のがびくりと跳ねる。
「龍く…」
「…楽、を離して」
冷静に、けれど瞳には怒りを湛えた龍之介を見て、楽は腕の力を緩める。
瞬間、は腕の中から抜けて龍之介に駆け寄る。
「…」
「龍くん…迎え、ありがと。帰ろ?帰りたい…ごめん」
「ん、わかった。大丈夫だからね。…楽、後で連絡する」
「…わかった」
の肩を抱き、そっと擦りながら龍之介は去って行く。
身体を震わせるの背中を見て、楽はやっと正気を取り戻した。
「…マジで何してんだ俺…」
そんな二人を見送りながら、楽は深くため息をつくのであった。