君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第120章 120
「私出る!」
「お、任せた!運ぶのは俺たちでやるからなー」
「はーい!」
玄関へ向かい、扉を開けば、と蕎麦屋の店員、双方目を見開く。
「…楽?」
「…あ、いえ。違います」
「嘘だぁ?!楽じゃん!匂いも楽!」
「お姉さん、犬っすか?」
「違いますけども。嘘じゃん!そっくりじゃん!」
「あんなにイケメンじゃないっすよ、俺」
楽だ、違う、と押し問答しつつ、しっかりと支払いをする。
「毎度!またよろしくお願いします!」
「はーい、ありがとうございました!帰り気を付けてくださいねー」
絶対楽じゃん、と小さな声で見送りつつ、は玄関を締め、取り敢えずお盆を一つ持ち上げる。
「!俺らが持ってくっつったじゃん!」
「一個くらい持てるもんっ!ていうか、楽だよね?」
「違うらしいんだよなぁ…」
「ま、世の中には似た奴が三人いるって言うしな」
「うーん…楽の香水の匂いしたんだけどなぁ…」
「あんまりにも似てる似てるって言われて寄せるようにしてんじゃね?八乙女の香水、公表されてんだろ?」
「公表されたの結構前じゃん。今香水変えてるんだよ、楽」
サラッとそれに気づいてしまうあたり、のTRIGGER狂い具合がよくわかる。
オタクすげぇ…と感心されながらは三月と大和と共に蕎麦を運ぶのであった。
「っはー!美味しかったー!」
「良い食いっぷりだったな」
「打ち合わせって緊張するからお腹空くんだよー」
「事務所での打ち合わせでも?」
「ううん。今日その前にもう一軒あったから。楽がいたからいつもよりは緊張しなかったけど」
呟きながら立ち上がり、食器を流しに持っていけば洗い始める。
「十さんと一緒の打ち合わせも緊張すんの?」
「龍くんと一緒の時は別の意味で緊張するかも」
苦笑しながら食器を洗いつつ呟く。
「一応さ、両片思いの設定を貫いてるから、現場の人はそんな私たちの片思いを叶えてあげようと頑張り出しちゃうこともあるのよね」
「あー、こないだあったな」
「そうそう。突然私と龍くん二人っきりにしたりとかね。油断してくっ付こうとしたら影の方で見守ってるとかめっちゃある」
その見守りに参加させられたことのある大和もまた苦笑しつつ頷く。