君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第114章 114
姉鷺の問いに、龍之介はこくりと頷く。
「はい。の実家とゆかりのある人がデビューするんです。月雲から。どうも、に気があるようなそぶりが多くて…」
苦笑しながら呟く龍之介に、姉鷺も、天と楽もそちらを見る。
「アイツ、マジで魔性の女だもんな。千さんや百さんも狙ってるって話だし」
「共演者はこぞって褒めたたえるし、の身に着けた小物や衣装はすぐに売り切れるってこの間情報番組で言ってたよ。ドラマの中で食べたものや、訪れた店も連日行列が出来てるって」
「ぽわわんとしてるのに、カリスマ性が凄いのよね。ちゃん」
天の言葉に、龍之介は何度か頷き、うーん、と唸る。
「すごいなぁ、」
「そんなが惚れ込んでるお前も充分すげぇんだぞ?龍」
「そう。あの笑顔に言葉が詰まらないのも龍だけだし」
「下岡さんですらタジタジだったもんな」
音楽番組に出演した際、がにこりと微笑むたびに、名司会者ミスター下岡は毎度一瞬固まっていた。
視聴者や他の共演者は気付かない程度のものだが、龍之介たちはのその笑みの魔力を知っているため、下岡に同情すらした。
「俺もまだ不意打ち食らうとな…」
「僕も。だいぶ慣れてきたけど」
「あの笑顔、何で固まっちゃうんだろうね?可愛すぎるから?」
龍之介の言葉に、楽、天、姉鷺はうーん、と唸って首を捻る。
「それもあるんだろうけど…固まるというより魅入っちゃうっていう方が近いかも」
「ずっと見てたくなるんだよな。多分」
「龍はずっと傍で見ていられるっていう心理が働くから、魅入っちゃうことがないのかもしれないわね」
頷く姉鷺だが、パン、と手をたたきTRIGGERの三人を見る。
「さ!ちゃんの話からいったん切り替えて、もうすぐ本番よ!ツアー最終東京公演二日間、楽しんでらっしゃい!」
「はい!」
「はいっ!」
「おう!」
そろそろ開幕の時間である。
舞台袖に設置してある会場内を映すモニターに三人で視線を向ける。
「今日もお客さんいっぱいだ」
「みんな、この日の為に頑張ってきてくれた。最高に楽しませてあげたい」
「やれるだろ、俺たちなら。これまでもずっとやってきた」
楽の言葉に頷き、天と龍之介はそれぞれ微笑む。