君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第114章 114
「あら、ちゃん、いい席取れたのねぇ」
「「「?!!」」」
姉鷺の言葉に、ライブモードに入った意識が完全に戻ってしまう。
「どこですか?」
「ここ、ここ。ほら、二列目」
「かっ……か、可愛い…」
「落ち着いて龍。が世界一可愛いのは分かってるから」
「龍、そこばっかファンサすんじゃねぇぞ?一曲に一回だけだぞ?分かったか?」
どんな言い聞かせよ。
等と思いつつも、龍之介もプロとは言えしっかり言い聞かせておくのは必要かもしれないとも考える。
なんせ、彼の惚れ込みようは半端じゃないのだから。
今だって、モニターの中のに釘付けである。
「そっか。は今日楽屋来れないんだっけ」
「明日早くから仕事だからすぐ帰らなきゃって言ってたな」
「そう…だから、今のうちに今日のを…愛でておかないと…」
「……確かに」
「それもそうだな。ずっとは見てやれねぇからな」
のTRIGGER狂いも相当なものだが、TRIGGER三人の狂いも割と重症である。
薄々感じていたが、執心具合はかなりのものだ。
「ほら!そろそろ本番よ!しっかりしなさい!」
「はい!」
「よし、行くぞお前ら!」
「おう!」
もうすぐ開演。
夢の中のような最高のステージが待っている。
「もうすぐ始まる」
腕時計を見ながら、はステージを見つめる。
初めてライブを見てからずっと変わらない期待感。
その期待をTRIGGERは裏切るどころから常に上回って与えてくれた。
その度に嬉しくて、幸せで、何度でも恋に落ちる。
愛しくて、恋しくて、何度も会いたくなる。
TRIGGERはにとって、ファンにとって、最高のアイドルだ。
「天、楽、龍くん…頑張れ」
ペンライトを握り締め、再度ステージを見上げればライトが消える。
次いで輝いた光は、TRIGGERの三人を照らしていた。
「TRIGGERー!!」
熱狂が高まる。
ここに居る全てのものがTRIGGERに恋をする。
嫌なことは忘れて、嬉しい気持ちは何倍にも膨れ上がらせて、今持っている己の全てを愛に変えて、ステージに、三人に向けてぶつける。
今宵、最高のステージが幕を開けた―――