君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第112章 112
そして、いざ出陣とばかりに二人手を繋いで店内へと足を踏み入れたのであった。
「気合い入れてバッチバチにおしゃれしてよかった…」
海外の高級ブランド店のイメージそのままの店内は、ドレスコードさえ準備されているかと思うかのごとく豪奢だった。
「お待ちしておりました、十様。こちらへご案内いたします」
店に入るなり、ビシッとスーツを着込んだ男性が二人を案内する。
どうやら個室に案内されるらしい。
個室へたどり着くまでの道中も細かいところまで装飾が施され、高級だなぁ、などとは庶民丸出しの感想を抱くのであった。
「、老舗旅館の娘なのに」
「実家で高級ジュエリーに触れる前にこっち来たから」
くすくす笑いながら辺りを見回す。
そういえば、高級ジュエリーどころか着物ですら、高価なものはこの間のTRIGGERとの撮影の時に初めて着たな、と思い出す。
仲居として働くことが多かった為、そこまで高価でない着物を着用していたのだ。
「こちらのお部屋へどうぞ。少しの間、お寛ぎになってお待ちください」
「ありがとうございます」
「それでは失礼致します」
スタッフが一礼し部屋を出ていくと同時に新たなスタッフが何やらメニューブックのようなものを携えて入室し、と龍之介の腰掛けるソファの前のテーブルにそれを開いた。
「お飲み物は如何でしょうか?」
「、何する?」
「んー…あ、りんごジュースが良い」
「じゃあ、りんごジュースと珈琲を」
「畏まりました。少々お待ちください」
メニューブックを閉じ、小脇に抱え一礼すれば、そのスタッフも部屋を出ていく。
「すごいね…一流店…」
「本当に」
「個室なのに宝石とか飾られてるし…」
呟きながらは立ち上がり、ショーケースの前に立つ。
さすが高級旅館の娘、驚いていたのは最初だけで、すぐにこの豪奢な場に慣れたようだ。
覗き込むショーケースの中には色とりどりの大きな宝石が並べられていた。
値札がないのが逆に怖い。
「は、どんなのがいい?」
「うーん、いつも着けられるような、シンプルな奴が良いな。あと」
「ん?」
「結婚指輪と、重ねて着けられる…のがいい」
「うん、そうだね」
後ろから抱き締められる形で問われ、龍之介を見上げながら答えれば優しい笑みが降ってくる。