君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第112章 112
「ならどんなのでも似合うから、迷っちゃうね」
「そう?」
「うん。でもの気に入るのならどんなものでもそれが最高のものだよね」
龍之介の言葉に、そうかな?そうかも、と嬉しそうに微笑んでいれば、扉がノックされる。
ソファに戻りながら返事をすれば、飲み物を持ったスタッフと担当になるのであろう女性スタッフがともに入って来た。
「お待たせいたしました。十様、様、お二人の担当をさせて頂きます、山下と申します」
「よろしくお願いします」
名刺を受け取り、二人で頭を下げる。
対面するように席に着いたスタッフは、飲み物が置かれもう一人のスタッフを見送ってから革製のカバーのタブレットを取り出し開いた。
「この度は、ご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「今回は、エンゲージリングをお求めとのことですが、お二人のお好みはどのようなものでしょうか?」
「俺も彼女も、シンプルなものが好きです」
「はい。あ、でも仕事柄ずっとつけていられないので、ふと飾ってあるのを見た時に気分が上がるようなものも良いなって、今思いました」
「なるほど、それいいね」
の言葉に頷き、龍之介は微笑む。
「となるとなんだろう?」
「でもね、龍くんからの贈り物って考えたら石がなくても、反対に石だけでも、なんでも、私にはとっておきになるんだ。だから、やっぱり二人が好きなシンプルなのが良い」
「そうだね。そうしよう」
「ん」
そっと頭を撫でられ、は嬉しそうに頷く。
それでは、とスタッフの声に二人でそちらを向く。
「お二人のことが公表されましたら、世紀の大カップルと呼ばれることは間違いございませんし、こちらの様なシンプルでありながら存在感のある指輪がおすすめかと」
「ほう…」
スタッフに勧められた商品の写真を見れば、龍之介はふむふむと写真を眺めながら頷くが、はその商品の下に書かれている値段に思わず白目を向きそうになった。
いや、いやいやいやいや!
たっっっっっか!!!
そんな心の声をうっかり表に出すことなどできず、はこっそり頭を抱えるのであった。