君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第108章 108
「結婚…へへ…」
自然と緩んでしまう頬をぴしぴしと軽く叩き、はお風呂に入ろうと頷く。
「龍くんから電話来る前に綺麗にしとこう!」
ビデオ通話ではないはずだが、万が一がある。
念のためいつスマホが鳴ってもいいように、脱衣所に持ち込んで風呂の準備。
「龍くんも寝る前だろうしね、電話くれるの」
寝る前に声を聞きたがる龍之介のことだから、と時間を時折確認しながら体を温める。
「…お風呂、広くない?」
そういえば一人で入ることは稀だ。
龍之介が遅くなる時は掃除ついでにシャワーで済ますことも多いから、湯船に入ることは少ない。
そんな事を考えながら全身を洗い、バスタオルを体に巻き付けながら風呂場を出れば、丁度いいタイミングで龍之介からの着信。
「もしもーし」
ハンズフリーにして壁に立てかけ、頭をわさわさと拭いていれば、無言。
何事かと首を傾げれば、やっと龍之介の声が聞こえた。
『お風呂上り?』
「うん。よくわかったね」
『見えてるから。…今日も綺麗だね』
「え…?…え?!!龍くん?!!」
龍之介の言葉にスマホを見て、そして駆け寄り両手でスマホを掴みあげる。
そこに映っていたのは、にこにこと微笑む愛しの彼。
「ビデオ通話してくれたの?」
『の顔がどうしても見たくて』
「嬉しいっ!って、ちょっと待ってて!着替えるから…」
『そのまま着替えていいよ?ホテルの部屋だから俺しかいないし』
「…えっち。じゃあ、勝手に寝る支度し始めちゃうから、見てて?」
くすくす笑いながら、はタオルで髪を拭いていく。
「ね、龍くん。ドライヤーしていい?」
『うん。俺今、ただの視聴者だから』
「ナイトルーティン動画だ」
『そう。可愛いよ、』
「コメントリアルに聞こえるみたいで照れる」
ドライヤーで髪を乾かしながら時折スマホに視線を向ければ、いつも通りの愛しい笑顔。
「ふふ、大好き」
『ん?何か言った?』
「龍くんが大好きって言った」
『俺も好きだよ』
龍之介の返答に嬉しそうに微笑み、乾いた髪を手櫛で整える。
『寒くない?』
「龍くんが見てくれてるからポカポカ」
『今すぐ帰りたくなっちゃう』
そんな龍之介の言葉に、はそちらを見て微笑む。