君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第108章 108
一方東京。
「そろそろホテル着いたかなぁ…」
デザートに、と龍之介によって準備されていた葡萄を食べながら、は台本をテーブルの上に開いて独り言。
明日は朝からドラマ撮影。
台詞はほぼ頭に入っているが、何かしていないと寂しさが押し寄せて来そうで落ち着かない。
「こんなに広かったんだねぇ…」
部屋を見回し、苦笑交じりに呟く。
この部屋へ初めて訪れた時から、龍之介はいつもこの部屋にいてくれた。
仕事で遅くなる時はあれど、どれだけ遅くなっても夜には温もりに包まれ、朝には触れ合えた。
お互いに忙しいから、とどれだけわずかな時間でも、と龍之介はほんの少しでも触れ合う事を大切にしていた。
しかしこれから三日間はそんな龍之介が傍に居ない。
「すでに寂しい…」
体感温度も若干寒い。
これで三日間もつのかと不安になっていれば、スマホのラビスタグラムの通知が鳴る。
が通知を鳴らしているのは、自分のアカウントへのメッセージなどが届いた時と、TRIGGERのアカウント。
更新されたら通知が来るようになっている。
「TRIGGER…あ、ご飯串カツ食べに行ったんだ。…はぁ…おててだけでセクシィーー!!好き!かっこいい!なんでいいね一回しか押せないんだろうー!五万回押したぁぁぁい!」
ハートマークを何度も押しながらソファに寝転び足をばたつかせる。
その間にもどんどん更新されるコメントを眺めていれば、ふと目についたコメント。
<龍之介さん、指輪してるの珍しいですね!>
<そのブランド、ペアリングも有名なとこですよね…>
勿論ペアリングのみではないが、結婚指輪や婚約指輪も幅広く展開している有名ブランドであることは確かだ。
そこまで特徴のある指輪ではないはずなのに、あっという間に特定され、は小さく息を呑む。
「ファン…すごい…!」
ここまでくるとある意味感心してしまう。
そのままそっとラビスタを閉じ、はそのままソファに倒れ込む。
「婚約指輪…かぁ…」
自宅にいる間は嵌めたままの左手薬指の指輪。
ライトにかざせば、小さな石がきらりと輝く。
まだお試しの指輪なので、ツアーの間にの気に入るものを買いに行こうと話し合っていた。