君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第106章 106
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい。楽しんでね!」
のその言葉にありがとう、と笑い、龍之介は予定していた時間より少しだけ遅れて、出かけていった。
「…よし。今日はレコーディングと、ジャケットの撮影だっけ。取り敢えず帰ったら干せるように洗濯機回そ」
段取りを組み立てながらは洗面所へ向かう。
扉を開けば先程まで準備をしていた龍之介の香り。
「ふふ、龍くんが傍に居るみたい」
洗濯機をセットし、そのまま出かける準備に取り掛かる。
そもそも着替えとメイクは終わっている。後は髪のセットだけだ。
それも慣れたもので、ささっと巻いて準備を終え、万理からの連絡を待ってエントランスへと降りる。
「おはよう、」
「おはようございます!」
「十くんはもう出たの?」
「はい、今日は直ぐ新幹線で大阪らしくて。後泊もしてきてって言ってあるんで四日間いません」
「そうか…寂しいんじゃない?」
「かなり寂しいです。どうしましょう」
苦笑しながら小さく息をつくは17歳の年相応の様子だが、それでも彼女はプロだ。
スタジオにつけばそんな寂しさは押し隠し、大人顔負けのプロ根性でスイッチを切り替える。
「おはようございます!」
「おはようございます、さん。今日もよろしくね」
「はい!宜しくお願いします!」
喉も声も問題ない。
歌詞もリズムも頭を身体に叩き込んである。
準備運動に軽く体を動かしてから、録音ブースに入る。
ヘッドホンを付け、マイクの前に立てば、小さく深呼吸をして、音を流すよう音響監督を見る。
「お願いします」
音楽がヘッドホンから鳴り出せば、リズムに乗りながら歌いだす。
相変わらずその歌声は圧巻の一言で、万理はかつての相方との出会いを思い出しぞくりと体を震わせる。
「OK!」
やがて通しで一曲歌い終えれば監督を見る。
「すっごい良い感じ!だけど、もうちょっと違うニュアンスのも録って良い?」
「はい!今結構気持ちモリモリで歌ってみましたけど、もうちょっとラフに歌った方が良いですか?」
「そうだね。サビはさっきのまんま感情マシマシで、メロだけもう少し軽めというか、ラフにお願い」
「わかりました」
その後もパート毎など何度か録り直し、皆で聞き比べていく。