君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第106章 106
楽しい旅行から無事帰宅した数日後。
龍之介はTRIGGERのライブツアーの為、大阪へと向かう日を迎えた。
今回は前日にリハーサルがあるので、前乗りである。
「じゃあ、。ちゃんと戸締りしてね、誰でも簡単にドア開けちゃダメだよ。夜はちゃんとご飯食べてお風呂入って、0時になる前に寝るんだよ。カーテン開けたままにしないようにね。一人で夜出歩いたりしたらダメだよ、暗い道も行っちゃダメ。知らない人についていったり、話したりしちゃダメだよ」
「うん。わかった!」
カバンを持ち上げての肩を掴み、何度目かの言い聞かせである。
ちなみに昨日までにも何度も言われたし、朝起きてからも言われた。
「夜寝れる?」
「うん、大丈夫。龍くんクッションいっぱい置いとくし、龍くんのシャツもあるし!」
二晩ほど着てもらい、龍之介の香りを移して洗濯をせずにおいていってもらう戦法である。
三日位なら何とか香りが持つだろうと踏んでいる。
何をやっているやら意味が分からないが、一緒に住み始めてこんなに離れたことがない為に、何もかもが未知数なのである。
「もし何か緊急事態が起きたら?」
「姉鷺さんに連絡する!」
「そう。姉鷺さんにならいつでも繋がるから」
残されるより、残して行く龍之介の方がずいぶんと寂しそうではあるが、それは龍之介が行き辛くならないよう、が必死に寂しさを隠しているからである。
「…」
「大丈夫。ね?」
「連れていきたい…」
「龍くん…」
呟かれたその言葉に、は龍之介を見上げる。
「良い子で待ってるから」
「うん。分かってる」
「ライブの成功応援しながら、お仕事頑張る」
「俺も応援してるよ」
「うん…龍くん」
きゅ、と抱き着けばそれ以上に強く抱き締められる。
お互いの寂しさは同じだ。
「愛してる」
「俺も愛してる。」
「ん?」
「帰ったら、一緒に寝ようね」
「うんっ。気を付けてね、行ってらっしゃい」
くしゃりと頭を撫でられ、は微笑み龍之介を見上げ口付ける。
唇が離れれば、龍之介もまた寂し気ながらも微笑んだ。