君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第98章 98
の言葉に地図を渡せば、ガサガサと開き、ぐるぐると回しながら辺りを見回し、再度地図に視線を落とした後、盛大に首を傾げる。
「……?」
薄々、そうなんじゃないかとは思ってはいた。
「えーと…」
実際、そんな節も時折見ていた。
「現在地、分かる?」
「わかんないっ!」
そして今、確信した。
この子は、方向音痴だ。
「うん、今ここね」
「うん!」
「で、地図の向きはこっち」
「うん!」
「はい、喫茶店どっちかな?」
「あっち!!」
正反対である。
「、絶対俺から離れちゃダメだよ」
「え?」
「よく…東京で迷子にならずに生きてこれたね。よかった…」
「へ?」
全く自覚のないに何でもないよ、と微笑み龍之介は最後の一口をに差し出す。
パクリと食べるの頭をそっと撫でればそのまま手を繋いだ。
「ホントに喉乾いちゃったね。喫茶店はこっち。いこっか」
「そっか、こっちか。うん、行こー」
離す気はさらさらないが、一生目が離せない理由が増えてしまった龍之介である。
龍之介の先導で到着した喫茶店はまさにレトロ。
ふた昔ほど前の創業の風情が漂っていた。
扉を開けばカウンターとボックス席。
マスターに案内されるがままボックス席につけば、そこは周りからの視線を隔てられる席だった。
「何にいたしましょう?」
「そうだなぁ、俺はブレンドを」
「私はアイスコーヒーお願いします」
「畏まりました」
丁寧に頭を下げカウンターの中へと戻るマスターを見送り、と龍之介は顔を見合わせる。
「お腹の具合はどう?」
「半分こずつだからまだ入るっ」
「良かった。あと何食べたい?」
「うんとね。温泉饅頭とー串焼き!後ソフトクリーム!」
「じゃあ…ここからだと…」
龍之介のナビにより、串焼きの後にソフトクリームと温泉饅頭を周り駐車場へ戻ることとなった。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
「……あの、よろしければお二人のサインを頂いてもよろしいですか?」
バレていたらしい。
快く承諾し、二人でサインを書く。