君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第98章 98
「一つお願いします」
「はい、ひとつねー。あら、美男美女」
「ありがとうございます」
コロッケを受け取りながらくすくす笑い、龍之介は袋をに手渡す。
「熱いから、火傷しないようにね」
「はぁい。メガネ曇るー」
「揚げたてだからね。はは、可愛い」
「はち……ん、おいしー」
はふはふと食べるに、心中盛大に悶える龍之介。
彼は、ならば何でも可愛いに変換してしまう特技があるようだ。
「龍くん、あーん」
「あー、っつい。けど美味しい」
「大丈夫?火傷してない?」
「ん、大丈夫。キスもできるよ」
「ふふ、良かった」
二人でコロッケを分け合いながら食べ終えれば次の店へ。
「あと何食べたい?龍くん、あれ食べたいって言ってたよね、えっと…お煎餅!」
「そうそう、焼きたてのが食べられるんだって」
「焼きたて…食べたことない。美味しそう!」
「お店近くっぽいし、行こっか」
観光マップを見ながら龍之介はの手を取り繋ぐ。
繋いだ手の反対の腕では龍之介の腕に抱き着く。
「こんなにくっ付いてさ、怒られないかな」
「うーん、でも俺たちこうしてたいし。仕方ない」
「それもそうだ。仕方ない」
笑い合いながら煎餅屋までやって来れば、男性店員だったためか先にが気付かれる。
が、すっと注文をかければ普段通りに接客をしてもらえた。
有名観光地の為に、芸能人の来訪は慣れているのかもしれない。
「ありがとうございます」
「美味しそー」
「の顔より大きいね」
くすくす笑いながら龍之介はスマホを取り出しての顔の横に煎餅を寄せ写真を撮る。
「ホントにおっきい―」
「ね」
煎餅を齧りながら辺りを見回せば、徐々に観光客が増えてきた。
ただ、長期休みでもないど平日の為か、観光客の年齢層も高めであり、すぐに気付かれるようなことはなさそうにも感じた。
「これ食べ終わったら喉乾いてそうだね」
「確かに。なんかこう、レトロな喫茶店とかないかなー。あむ」
口元に小さめに割られた煎餅を差し出されれば、パクリと食べる。
まるで雛鳥である。
「喫茶店かぁ…」
「マップみーせて」