君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第98章 98
車を停めやって来たのは、温泉街。
この先に泊まる宿があるのだが、まずは昼ご飯を兼ねて観光をしてみようとなったのだ。
「結構いるけど…大丈夫かな」
「堂々としていよう。撮影だと思わせれたら最高」
「確かに」
くすくす笑いながら手を繋ぎ、辺りを見回す。
「わぁ…」
観光客の集まるエリアにたどり着けば、の目が輝く。
旅館という家業の為に、所謂旅行と言うものをしたことがあまりない。
それ故に観光地へ訪れることも少なかったようで、The観光地という周りの雰囲気にウキウキが止まらないようである。
「さ、お昼がてら何食べたい?」
「食べ歩き!」
の憧れ、食べ歩き。
京都では旅館の娘が道端でものを食べるなと厳しく言われていた為に、そのようなことをしたことがなかった。
そんな話も聞いていた為に、龍之介は微笑み頷く。
「じゃあ、の食べたいものいっぱい食べよう」
龍之介の言葉に微笑み頷いて、は辺りをきょろきょろと見まわす。
余りのはしゃぎように、龍之介はの手を繋ぎ直したほどである。
「何しよう!何しよう!コロッケ!アイス!はっ!温泉饅頭!!」
「、、逃げないから落ち着いて」
まるで五歳児である。
龍之介の声に我に返ったは、ぴたりと動きを止めて龍之介を見上げた。
「……大変?」
「ううん、すごく可愛い。でも危ないからゆっくり見ようね」
「うん!」
「おりこうさん。まずはコロッケ?」
「コロッケ食べたい!」
刻々頷くに頷き返し、店に向かう。
「結構有名店らしいけど、平日だから空いてるね。……そういえば、良く学校休むの許してくれたね、小鳥遊社長」
「うん。直前に試験だったから、全教科合格点取れたら行っていいって言われたの」
「ものすごい勢いで勉強してたの、試験勉強?」
「そう!全教科中、二教科満点!」
「え、凄い!頑張ったね、」
その間にも仕事や家事、龍之介との時間もきちんととっていた。
のその目標達成への直向きさには、素直に尊敬の念がわく。