君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第88章 88
二人でステージに立ち、向かい合って立てばは龍之介を見上げる。
「緊張してる?」
「うん。でも、龍くんがいるから心地いい緊張感。龍くんとステージで一緒に踊れるなんて…幸せ」
「良かった。楽しもうね」
「うん!」
微笑みの頭を軽く撫でる龍之介に頷き、再度頷き合った二人は立ち位置にスタンバイ。
合図とともに曲が流れ始めると同時に、と龍之介も踊り出した。
「さすが龍…」
「の良いとこ全部出るように振り考えたんだな」
息の合ったダンスに感心していれば、そこから聞こえたの歌声に、天と楽は顔を見合わせた。
「すげぇ…」
「配信ではもう聞いてたけど…この衝撃は中々だね」
声だけでなく、全身と心を使って訴えかけてくるようなその歌声に、スタッフもまたうっかり手を止め聞き入っていた。
「大丈夫かな」
「何がだよ」
「がファンの愛に押し潰されないか心配になってきた」
まだ女優、しか知らぬ者たちは、これからもっとを好きになるだろう。
歌手、を知った者たちは、これから女優としてのも好きになるだろう。
彼らの愛は時に身勝手に暴走し、様々な形でに降りかかる。
そんな時、あの小さな身体がその愛に耐えきれるのだろうか。
「…龍がいるから大丈夫だろ」
「その龍に何かあったら?」
「不吉なこと言うなよ、お前」
天の言葉に楽が引いたような表情を浮かべる。
不吉なことだけじゃなくて、と前置きしてから天は再度呟く。
「例えば、スキャンダルとか、何かの事情とか、どうしようもないことが起きて二人が別れたりとか。…まぁ、あの二人からは考えられないけど」
「別れたり…したらなぁ…」
「……ねぇ、今チャンスとか考えた?有り得ないんだけど」
「な、んなわけねぇだろ!」
何かを考えこむ楽に、訝し気な表情を向ける天。
慌てて否定するが、その慌て方をつい怪しんでしまうのは、自らも彼女をそれなりに大切に思っているからだろうか。