君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第86章 86
かなり、一方的にがキレたのだ。
きっかけは、龍之介のほんの些細な一言だった。
「龍くんに、明日何時に帰る?って聞かれて…予定は出てたけど時間押すこともあるし…そんな毎回毎回わかるわけないじゃんって…おっきい声で責めるみたいに…だから、申し訳なくていたたまれなくて…逃げて来ちゃ…うぅ…も、ほんと…うぇーん…」
元々、は自らの感情に正直な方である。
寮に住んでいたころは仕事で上手くいかなければ、帰ってきてから号泣し、集中し始めれば寝食を忘れるほどにのめり込んでいた。
それを龍之介の前で出し切ることを無意識の内に抑えてしまっていたらしく、それが溜まりに溜まって爆発したらしい。
「好きな男の前だからちょっと猫被ったな」
「バッカだなー。十さんがんなことで引くかよ」
「ちゃん、甘えるの怖かった?」
大和と三月の言葉に唸りながら肩をすくめていたは、壮五の問いに顔を上げ、それから頷くとともに俯く。
「だって…絶対迷惑かけるの分かってたもん。今は良いけど、いつか愛想付かされるって…」
私はあんなに愛される資格ない。
そんな彼女の言葉に、一同顔を見合わせてから順番にの頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
「わわ…」
「お前さんはホントに…」
「分ってねぇなぁ」
大和と三月の言葉にそちらを見上げれば、ニッと笑われる。
「少なくとも、俺たちIDOLiSH7はお前のことちょーー大事に思ってるぞ?」
「…うん」
「そんな俺たちより、十さんはのこと愛してるんだぞ?」
「……うん」
二人の言葉に素直に頷く。
それは十分、痛いほどわかっている。
けれど、自分がそれほどに愛されていいのかという疑問はいつまでも、未だに拭いきれなかった。
「…玄関のチャイムが後30分以内に鳴るに王様プリン五個」
「え?」
「俺も」
「私もです」
「僕も」
「YES!私もです」
賭けになんねぇじゃん!
と言い合っているところに、早朝にも関わらず躊躇なく鳴らされる玄関チャイム。
「いや、早…」
「フラグかよ」
苦笑しながら、三月が玄関へ向かう。
扉の開く音と共に一言二言何か話す声が聞こえ、バタバタと階段を上がってくる音。
があわあわと逃げようとするところを一織によって両肩を掴まれ、逃走は叶わなかった。