君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第86章 86
「!」
自らの名前を呼ぶ声と共に、思いきり抱き締められる。
「…龍くん」
「良かった!どこにもいなくて、何かあったのかと…!無事でよかった…」
しっかりとを抱きしめ、龍之介は安堵のため息をついてからわずかに体を離しを見る。
「何もない?」
「…ある」
「え?!」
の答えに驚き、の体に傷などがないか目視で確認する龍之介に、軽く首を振ってから口を開く。
「ごめんなさい。あんなこと…言って。怒って、責めて…ごめんなさい」
謝りながら、昨晩の自分の醜態が情けなくなって涙が溢れそうになる。
泣くな。自分が悪いんだから、泣いて逃げるな。
「」
「あい」
あい、って…可愛いかよ!!!
周囲の悶える気配に小さく苦笑しつつ、龍之介は両手での顔を優しく包み込む。
「ごめん」
「何で龍くんが謝る、の…?」
「が限界なことに気付かなかった。が頑張ってくれてるの気付いてて、それを当たり前にしようとした。ごめん、俺が追い詰めたんだよね」
「違う…私がもっと、ちゃんと言えてたら…大変って、我慢しすぎたから…。自分勝手に怒って、ごめんなさい、龍くん、びっくりさせて…困らせてごめんね」
お互いの忙しさにかまけて、目を逸らした部分がこんな形になってしまった。
必死に涙を堪えるの頬を撫で抱き締める。
「まず、我慢やめよ?いつだって泣いていいから。我儘だって言っていい。の我儘なら、どんな我儘だって俺には可愛いよ」
周りからカッケェ…とぽつりと聞こえるが、そんなことはない。ただの本心なのだから。
まだまだ注がれる愛を、ただ浴び続けることになれていなかった。
それでも幸せそうにしてくれるから、もう大丈夫だと思っていた。
けれど、まだ自分に甘えることを遠慮していたのだと、今回思い知らされた。
「りゅ…」
「もっと甘えていいよ。俺、全部受け止めるから」
「龍くん…ふ、う…ふぇ…」
きゅ、と抱き締められる力が強くなり、何かのスイッチを押したのかはわんわんと泣き出す。
そんなを見て、改めてほっとしたように微笑み、龍之介はの頭を撫で、泣き止むまで抱き締め続けるのであった。