君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第85章 85
動画も酷評はされてない。
動画のコメントも褒めてくれるファンの言葉が殆どだし、周りからの感想や評価も上々だ。
「何でそんなに自信無さげなの?」
「なんででしょう…?昔から、歌う事は大好きなんですけど。それが評価されるようになると、とたんに自信が無くなってしまって」
何故かは薄々分かっている。けれど、それは今ここで出すべき話題ではない。
「場数こなす様になれば、もっと様々な評価が出れば、納得できると思うんです。だから今はデビュー目指して頑張っていきたいと思います」
「そっか。ちゃんなら良い歌手になれると思うよ」
「そうね」
「ありがとうございます!あ、マネージャー待たせてしまっているので、ここで失礼します」
「まったねー」
「じゃあね」
ぺこりと一礼し、小走りに去るを見送り、百と千は軽く唇を舐める。その目は獲物を狙う鷹のようである。
「なるほど、魔性の笑みね」
「そ。一人だけ効かない子がいるけどね」
「うそ。誰?」
「龍之介」
百の言葉に、千はなるほど、と小さく頷く。
「…へぇ、もしかしてお姫様の騎士はもう決まっちゃってるのかな?」
「そんな気がするよねー。って、千もちゃん狙ってんの?!」
「も、ってことは、百もそうなの?」
「俺はダーリン一筋にゃんだからぁ!」
「分ってるよ、百」
「千イケメェーン!」
そんな夫婦漫才が繰り広げられていることを知る由もなく、は万理の待つ車へと乗り込んだ。
「お疲れ様です」
「お疲れ様。次レッスンだから、このまま事務所向かうね。これ軽くお昼」
「はーい。ありがとうございます」
レッスンは講師を招いて小鳥遊事務所のレッスン室で行うことになっている。
休憩時間にはデビューに関するインタビューが入るらしい。
売れっ子になるだろうと予想はしていたものの、思った以上の人気ぶりで、本人のみならず、事務所全体がこのブームに驚いているところだ。