君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第9章 9
「仲は…いいと思うんだけど…」
「だけど?」
「俺と同じ気持ちかは、わからない」
龍之介の答えに、なるほどね、と頷き、天は息をつく。
「正直、共演した子を好きになるなんてプロ意識が足りないんじゃない?とは思うよ」
「うん…」
「おい、天…」
「でも、無理ないかもしれない、とも思う」
「え?」
「もう予告がテレビで流れてるでしょ?あれ僕も見たんだ。彼女は、誰もがみんな一目で恋しちゃうような、凄い女優だよ」
珍しく褒めたたえる天に、龍之介はだよね!と頷く。
「例えば龍じゃなくて、共演が楽だったら、今ここでため息をついてるのは楽だよ」
「マジかよ…。って龍!実際俺は惚れてねぇんだから睨むな!」
「あ、ごめん…」
「僕でも、わからない。少なくとも予告で流れた彼女の役に、僕はとても惹かれる。龍、大丈夫、僕が恋するのはファンにだけだから。取らないから」
「…ごめんっ。え、じゃあ…今俺が彼女を好きっていう気持ちは…」
「共演してる間だけのまやかしかもしれないし、本物かもしれない。クランクアップしたら、スイッチが切り替わって、ただの元共演者になるかもしれないし、ずっと恋焦がれ続けるかもしれない」
天の言葉に、龍之介はウンウン頷く。
龍の方が年上だよな?
という楽の心の突っ込みは、漏れ出さぬようそっと心に埋めることにした。
「気持ちを見極められるように、撮影中は共演者として徹底したほうがいいんじゃない?」
「うん!そうするよ。ありがとう天!…あれ?さんだ」
こくこくと頷き、晴れやかな笑顔に戻った瞬間、スマホの着信が鳴り、龍之介は首を傾げる。
噂をすればなんとやら、だ。
「電話なんて珍しい…もしもし?」
『あ、十さん。お疲れ様です!撮休日にごめんなさい』
「お疲れ様!大丈夫だよ。何かあったの?」
『あの…明日のシーン、なんですけど…監督からの変更の連絡見ましたか?』
「変更?ちょっと待ってね」
からの電話で若干舞い上がりそうな気持を抑え、龍之介はノートパソコンでメールを開く。
つい先ほど届いたばかりの変更メールを開き、読み進めて、固まった。